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土門「辛」聞

日米双方に大きな痛手、暗礁に乗り上げたTPP交渉

2月22日から4日間にわたるシンガポールでのTPP交渉閣僚会合は、筆者の予想通り、合意を得ることができませんでした。同26日付けの毎日新聞は、「TPP『漂流』の危機…合意、また先送り」と報じてきました。筆者はもっと厳しい見方をしています。「漂流」ならまだしも「暗礁」に乗り上げている状態ではないかと思うのです。「失敗」という表現を使ってもおかしくない交渉結果でした。いずれにせよ、今回の交渉で枠組みは大きく変わるでしょう。そうなれば、交渉自体が一から仕切り直しということも十分に考えられます。
交渉を重ねるごとに、TPP交渉を主導する米国の思惑が透けて見えてきたことが、交渉を「暗礁」に乗り上げさせた最大の原因ではないでしょうか。ウィキリークスが明らかにした交渉テーマへの賛否状況を概観すると、あたかも米国系多国籍資本の“権利の章典”のような色彩が強く、そのことに加盟国の一部がようやく気がつき始めたということではないでしょうか。それ以外は不利益を被るという図式が、交渉参加国の間で理解され始めたということに尽きると思います。

「フロマンは、何なんだ」

「合意なし」は、日米双方の交渉トップ、TPP交渉担当の甘利明経済再生大臣とマイケル・フロマン米通商代表との動きだけを追っていくだけで、いとも簡単に予想がつきました。これをキーワードで表現すれば、前月号で紹介した「ドタキャン」と「シカト」に続き、今度は「ポーズ」が加わるのです。(以降、敬称略)
【ドタキャン】 昨年12月のシンガポールでの閣僚会合で、甘利が会合5日前というのに、「舌ガンの初期症状」を理由に出席をキャンセルしたことです。
【シカト】 舞台は、1月のスイス・ダボスでの世界経済フォーラム。甘利が、「フロマン、ダボスに来たる」の報に、「会ってぇ~」と秋波を送るも拒否されたことです。もっともフロマンは、ダボスへ出発前の甘利との電話会談に応じましたが、それならなぜダボスで会談しないのかという疑問が出てきます。同じくダボスにやってきた茂木敏充経済産業大臣、林芳正農林水産大臣に会っておきながらTPP交渉担当大臣に会わないのは、甘利にとって最大の屈辱ではなかったでしょうか。米国にしたら、甘利と話をつけても、業界や農業団体を説得できないけど、茂木や林なら、説得できるから交渉に応じたという見方が成り立ちますね。これは長年にわたる在京米国大使館による日本政官界の実に正確な分析結果の産物のようでして、甘利には誠に気の毒なことでした。
【ポーズ】 交渉は、昨年12月のシンガポールでの閣僚会合に甘利が「ドタキャン」したことで事実上の勝負がついていて、それ以降はプロ野球の消化試合のようなものだったと思います。とにかく一生懸命に交渉を続けているよと「ポーズ」をとるようなものでして、その最たるものが、2月のシンガポールでの閣僚会談の直前(2月15日)に、甘利が急遽ワシントンに飛んだことです。そこでようやくフロマンを相手にTPP交渉と同時に進行中の日米並行協議に臨むことになったのです。外電が送ってきたテーブルを挟んでの甘利、フロマンの会談模様から伝わってきたのは、お互い作り笑いもない無機質なショットでした。これに近いとしたら、北朝鮮の高官を相手にした交渉ぐらいではないでしょうか。とにかく甘利、フロマンにはお互いに「信頼関係」のようなものは存在しなかったと思わせるのに十分なシーンでした。
2月25日に終了したシンガポールでの閣僚会合を総括した同26日付け北海道新聞に、甘利のフロマン評が紹介されていました。
「フロマンは、何なんだ」

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