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特集

天候の異変を読む経営 異常気象時代に生き残るリスク管理



【野生の情報取得能力と将来を考える経営感覚】

寒だめしを実践する中、りんごの木から教わること、問いを投げかけられるようなことも多いという。
「たとえば、今年はなぜ二次伸長が多いのかと考える。二次伸長は果樹農家にとっては不都合なものですが、りんごの木には自分たちの生長と子孫を残す狙いがある。そのために彼らは彼らなりにいろいろな情報を受け取って、それに対応しているはずです。野生動物でもそうでしょう。人間も元々はそういうものを感じる能力があったはずですが、今の人間はそこが衰えている。でも、何かを感じ取って、それを将来に生かす努力は必要ではないですか」
与えられる情報に右往左往するのではなく、自ら感じ取り、自ら判断しようとする。寒だめしはそうした経営感覚を養う方法と言えそうだ。

木村図氏が実践する「寒だめし」
寒中30日間で1年の気象を予測する

「寒だめし」は江戸時代に普及した天候予測方法だが、今日でも全国各地に実践しているグループがある。
木村氏は青森県田舎館村に伝わる「寒の刻積」(かんのこくづもり・中村善時・1700年代)という古文書と、県内の実践家グループに寒だめしを学び、津軽煉成会というグループを組織して共同で観測、予測、研究を行なっている。
「寒の刻積」の本式によれば、寒の入り(小寒)から立春までの30日の間、多くの場合グループを組んで3交代制などで不寝番をして当たり、2時間ごとに気象を観測して記録する。この2時間(1トキ)を1日として、12トキ×30日=360日分の気象予測データとする(左上図)。
現在木村氏は園地にソーラー発電型の観測機器を設置し、24時間の温度、風速、風量、気圧のデータを蓄積して活用しているが、江戸時代には観測者が五感で感じたものを記録していた。これは観測機器がない時代の古い方法とも言えるが、本来はむしろこのように体感した結果を重視したとのことである。実際木村氏も、同期間内の深夜にたまたま起きたときなどは外に出るようにし、感じたことをデータに補足する材料として役立てている。
30日間のデータから予測を立てるポイントはいくつかあるが、たとえば秋に当たる期間に風速の上昇と気圧の低下が同時に際立っている箇所があれば、それが台風と予測する。春先の同様の形は春一番と考えられる。また、7月頃に当たる期間に気圧と気温が上がれば梅雨明けなど、複数の変化があるポイントや、変化が急なポイントなどに着目して、季節に合わせてその意味を読み解く。

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