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シリーズ水田農業イノベーション

名取市の大規模水田での稲‐麦‐大豆2年3作の実証試験(後編)~乾田直播を基軸とした水田輪作の実証試験~

  • (独)東北農業研究センター 東北水田輪作研究チーム 上席研究員 大谷隆二
  • 第10回 2014年04月21日

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名取市K法人のこれまでの2年3作輪作体系 名取市の実証経営K法人が、移植水稲─大麦─大豆で、土地生産性の高い2年3作輪作を主に実施していることは前編で述べた。はじめに概要を紹介する。
水稲品種は「ひとめぼれ」、「ミヤコガネモチ」、2年3作圃場の大豆跡には「まなむすめ」が植えられる。2年3作の作期は、稲収穫が9月下旬~10月上旬で、稲ワラ収集を行なった後に大麦播種を行なう。大麦の品種は「シュンライ」で、収穫は6月上旬である。大豆の品種は「ミヤギシロメ」で、6月中旬が標準の播種時期であり、収穫は11月下旬~12月いっぱいまで行なわれる。12月にはモチの加工生産の作業が始まり、このような6次産業化の取り組みで年間の労働時間が均等に配分されるよう経営が工夫されている。
K法人の2年3作の作業体系で特筆すべきは、麦の播種が散播で行なわれていることである。ブロードキャスターで散播して代かきハローで攪拌・覆土し、麦踏みローラで鎮圧する方法は、稲収穫後の限られた期間に迅速に作業ができる省力・低コスト栽培法である。水稲については、打ち込み式湛水直播をかつて省力化のために数年間試したことがあるが、現在は全面積で移植栽培が行なわれている。

乾田直播を基軸とした
2年3作水田輪作

実証試験の輪作体系は、一層の省力化と高収益を目指して、図1に示すような2年3作体系とした。大区画圃場による大規模経営に適するプラウ耕鎮圧体系の乾田直播を導入し、収益向上を目指して大麦に換えて小麦を導入することとした。
作期は、乾田直播の播種が4月上旬~5月上旬で、収穫が9月下旬~10月上旬。水稲跡の小麦播種が10月下旬~11月上旬で、小麦の収穫時期は6月下旬となり、大豆の播種時期は標準播きよりも半月以上遅くなる。このため、大豆は条間を30前後に狭くして播種量を多くした狭畦密植栽培とする。大豆品種には、2013年に宮城県の奨励品種になった「あきみやび」を組み合わせ、中耕作業や倍土作業を省略して雑草防除の省力化を図る。
作業機械については、2年3作の水稲‐小麦‐大豆のすべての作目において、耕起作業にはスタブルカルチを、播種作業にはグレーンドリルを用いる。水稲作用と畑作用の機械の区別をなくした体系を確立し、機械コストの削減を目指す。図2に示したチゼルとディスクを組み合わせたスタブルカルチは、時速8程度の高速作業で刈株など前作残渣の70%以上を土中に埋没させることができる。

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