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【シリーズ水田農業イノベーション】
名取市の大規模水田での稲‐麦‐大豆2年3作の実証試験(後編)~乾田直播を基軸とした水田輪作の実証試験~
- (独)東北農業研究センター 東北水田輪作研究チーム 上席研究員 大谷隆二
- 第10回 2014年04月21日
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実証のポイントの第一は、スタブルカルチ、グレーンドリル用いた2年3作体系において、高速・高精度な播種作業体系を確立することである。第二は、水田から畑、畑から水田に毎年交互に転換するため、圃場の排水機能と湛水機能のまったく逆の機能を迅速に切り替える技術の開発・実証である。第三は、肥培管理や雑草対策技術の開発による収量確保である。
プロジェクトの最終目標は生産コストの半減であるが、地域の自然環境と調和した持続的な農法としての輪作体系を確立することが重要である。そのため、輪作体系のなかに堆肥を還元する技術や、深層施肥などの合理的な施肥法を開発・実証する予定である。
造成した大区画圃場での
乾田直播の実施
3.4haと2.2haの大区画圃場において13年に実施した乾田直播の耕起播種体系は以下のとおりである。
播種前作業
耕起は、3月13~14日に作業幅2.5mのスタブルカルチ(図2)で行なった。126馬力のトラクターとの組み合わせで作業速度8km/時、作業能率1.2ha/時だった。
播種
播種作業は天候の安定している4月9~10日に実施した。早期播種のため、種籾には殺菌効果のあるチウラム(キヒゲンR2フロアブル)を塗沫した。
播種作業体系は図3に示すとおり、播種直前に作業幅5.3mのケンブリッジローラーで播種床を造成し、グレーンドリルで播種した後に、再びケンブリッジローラーで播種後の鎮圧を実施した。播種床造成では、ケンブリッジローラーのヘラ状のクラカーボードを作用させ、土壌表面の凹凸を均しながら作業した。ケンブリッジローラーの鎮圧による砕土の様子を図4に示す。ケンブリッジローラー1回の走行で、圃場の硬さが足跡深さで4cm 、砕土率70%以上の播種床が造成できた。播種床造成の作業速度は12km/時、作業能率は2.6ha/時であった。
グレーンドリルの作業幅は3mであり、140馬力トラクターと組み合わせた。作業速度は12km/時、3.4ha圃場の播種は2時間で終了し、作業能率は1.7ha/時であった。ケンブリッジローラーによる播種後の鎮圧は、土壌透水性の事前調査から漏水対策として、縦・横・縦の3回作業とした。作業速度は12~17km/時、3回作業トータルの作業能率は1.2ha/時となった。
品種は宮城県で開発された直播適性のある「まなむすめ」、播種量は5kg/10aとし、大豆跡圃場のため無肥料栽培とした。条間については、24cmと12cmを両圃場で検討することとした。
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大谷隆二 オオタニリュウジ
(独)東北農業研究センター
東北水田輪作研究チーム 上席研究員
1961年山口県生まれ。岡山大学農学部を卒業後、農林水産省に入省。北海道農業試験場で「草地飼料作および水稲作の機械化に関する研究」、農業研究センターで「水稲の低コスト栽培および乾燥調製に関する研究」に従事。1997年に岡山大学より学位(農学博士)を授与され、1998年に「無代かき直播栽培に関する研究」で農業機械学会技術奨励賞を受賞。その後、農林水産省大臣官房で技術調整に関する業務に従事し、2003年に東北農業研究センターに異動。「水稲乾田直播の作業体系の開発」、「稲わら・飼料イネの収穫体系に関する研究」に従事する。著書に『北の国の直播』(共著)がある。
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