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【シリーズ水田農業イノベーション】
名取市の大規模水田での稲‐麦‐大豆2年3作の実証試験(後編)~乾田直播を基軸とした水田輪作の実証試験~
- (独)東北農業研究センター 東北水田輪作研究チーム 上席研究員 大谷隆二
- 第10回 2014年04月21日
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水管理・防除
5月15日頃から出芽が始まり、5月22日に出芽揃い、5月29日に選択性茎葉処理剤を散布した後、6月1日に水入れした。水入れ後の減水深は目標とする2/日以下となり、苗立ち本数は100本/平方m以上が得られた(表1、図5)。
最高分けつ期(7月11日)の茎数は両圃場とも550本/平方m程度であった。8月2日にツトムシ防除、8月21日にカメムシ防除をラジコンヘンリコプターで実施した。出穂日は8月14日で、この頃からイヌビエの残草が繁茂した。9月後半から両圃場とも合筆・均平した盛土部分で倒伏し、図6に示すとおり3・4ha圃場の方が倒伏面積は広かった。
収穫
収穫は10月10~12日に6条の収量コンバインで行なった。収量および収量構成要素を表2に示す。全刈り収量は、両圃場を合わせて549kg/10a(粒厚1.9mm以上、販売数量から算出)。登熟歩合は、倒伏のため70%前後で、玄米千粒重は、倒伏が少なかった2.2ha圃場では24g台であった。
次年度は、今年度ラジコンヘリコプターでリモートセンシングした生育マップおよび収量コンバインによる収量マップに基づいて、基肥の可変施肥を行ない均一な生育になるよう管理して、さらなる高収量を目指す予定である。
実証試験と仙台平野の
津波被災地域の今後
名取市K法人に造成した3.4ha圃場は、東北地域では最大級の大きさであり、均平精度や漏水、苗立ち、風による田面水の吹き寄せ、地力ムラなど、当初様々な問題が想定された。これらの問題は、一つずつクリアされ、寒冷地での大区画圃場での機械化体系のあり方について、一定の知見が得られつつある。
圃場区画を大型化して、機械化作業体系の高速化・高能率化を追求したところ、トラクターのPTO軸の回転動力を使わない、トラクター本来の「Tractor=牽引するもの」という使い方による牽引機械による作業体系となった。2年3作の水田輪作で用いる稲作用機械、畑作用機械の区別がないことも大きな特徴である。
圃場区画が大型化すると、ブロードキャスターによる肥料散布や、防除機による農薬散布作業など、次工程への浸入の際に、オペレーターの目視による走行位置の認識が難しくなる。
北海道の大規模畑作地帯では、GPSによってモニターに走行位置を指示するガイダンスシステムが急速に普及しており、一部では直進作業の操舵を自動で行なうシステムも導入されている。今回造成したような長辺が300m以上の圃場では、直進作業時のステアリングを自動で操舵するシステムもオペレーターへの作業負荷軽減が期待できると考えられ、今後種々の作業で検討する予定である。
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大谷隆二 オオタニリュウジ
(独)東北農業研究センター
東北水田輪作研究チーム 上席研究員
1961年山口県生まれ。岡山大学農学部を卒業後、農林水産省に入省。北海道農業試験場で「草地飼料作および水稲作の機械化に関する研究」、農業研究センターで「水稲の低コスト栽培および乾燥調製に関する研究」に従事。1997年に岡山大学より学位(農学博士)を授与され、1998年に「無代かき直播栽培に関する研究」で農業機械学会技術奨励賞を受賞。その後、農林水産省大臣官房で技術調整に関する業務に従事し、2003年に東北農業研究センターに異動。「水稲乾田直播の作業体系の開発」、「稲わら・飼料イネの収穫体系に関する研究」に従事する。著書に『北の国の直播』(共著)がある。
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