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イベントレポート

農村経営視察会 第1回 農業生産法人 みわ・ダッシュ村

今年に入って(株)農業技術通信社が発足させた農村経営研究会は4月2、3日の両日、初となるケーススタディの場を京都府福知山市で設けた。視察先の農業生産法人みわ・ダッシュ村(以下、ダッシュ村)は1口100万円で株主を募って営農資金を調達。それを元手に切りひらいた耕作放棄地の田畑で有機農産物を作り、株主に届けて配当としている。そのほか山間の集落に都会からの移住者や観光客を呼び込む仕掛けをしている。 (取材・まとめ/窪田新之助)

1口100万円で株主募集

例年より早い花見の時期を迎えた2日の京都は、朝から春らしい陽気に恵まれた。JR東海道新幹線の京都駅に集合した研究会のメンバーたちは、そこから京都府の北西部にある福知山市へとバスで向かう。途中高速道路を使いながら1時間半も経った頃には、辺りを山々に囲まれた目的地の付近にたどり着いていた。
到着した先は2月号の「新・農業経営者ルポ」で紹介した、農業生産法人京都府天田郡みわ・ダッシュ村。代表である清水三雄“村長”や娘の流美さんらが約10年前から経営する農場である。筆者が前回訪れた時と同じく、清水さんは赤のつなぎを着て従業員らとともに待っていてくれた。
農場といっても田畑だけではない。柵で囲った中に飼い犬を放して思う存分に遊ばせる「ドッグラン」。22・8mという世界一の高さでギネスブックに登録された巨大ブランコ。ヤギや豚などが放し飼いされている牧場にメダカを飼っている池。また4・5haという広大で起伏に富んだ山野を歩いていると、春であれば貯水池を一杯に埋めるモリアオガエルのおたまじゃくしや土から顔を出したタケノコなどを発見できる。こうした季節に応じた自然や動植物のさまざまな息遣いを感じ取るため、年間5000人を超える人々が訪れてくるのだ。
研究会当日のことに入る前に、もう少しだけダッシュ村のことを説明しよう。
清水さんが農業を始めようと思い立ったのは60歳になってから。縁あってこの地で荒れていた4・5haの農地を耕すことになった。営農資金の確保に悩む中、たどり着いた答えは株主を募って出資してもらうこと。その金額は1株当たりなんと100万円。個人の場合は1株100万円だけのモニター農場主と、3株300万円の個人農場主を用意した。法人については9株900万円以上とした。
株主には最低5年間、ダッシュ村で収穫した無農薬・無化学肥料のコメや野菜、果物を毎月届ける。利回りにすれば約7%相当分。サービスの内容は取得株式数に応じて変えている。
驚くべき金額だが、譲渡できる上限249株(2億4900万円)の88株(8800万円)をすでに売却したそうだ。1株100万円に設定したのはなぜなのか。前回の取材で清水さんに聞いたところ、「区切りが良い。それにこのぐらいの金額でないと、農場主に農作物を毎月送れないから」と答えていた。農産物を宅配する月日をさらに空けてしまえば、農場主とダッシュ村との距離感がそれだけ遠くなってしまうというわけだ。

分かる人とつながる

清水さんは株主になってくれた人にその理由を聞くようにしている。多くは事業理念に共感してくれるからだそうだ。それは次の3つ。
1)耕作放棄地を優良農地に変える
2)完全無農薬無化学肥料の有機栽培をする
3)過疎地・限界集落の活性化
取材前に想像していたのと違い、聞いてみれば、株の購入者で清水さんと個人的な付き合いがあったのは1人だけ。残りはすべて見知らぬ人たちである。
「問題を解決するにも人を引き込んで、商売にしてしまうのが一番ですよね。そういう点では清水村長はうまいと思います」
こう語るのは“副村長”山本晋也さん。彼はもともと芸術家で、京都市内のレストランで勤めた経歴も持つ。以前は京都市で暮らしていたが、彼もまた清水村長の事業理念に引かれて妻や子どもたちと福知山市三和町に移り住んだ。みわ・ダッシュ村がある一帯も十分に過疎地といえるが、山本さん一家が暮らすのはさらに車で15分ほども山奥に向かった7戸だけのどん詰まりの集落である。
一行は研究会2日目にその集落を訪れた。いわゆる「限界集落」と呼ばれるところで、村の住民の半数はなんと山本家という人口の少なさである。ただ、山本さんは「ここは人を呼び込める場所」だという。集落を流れる小川では魚が取れるし、近所にはおはぎづくりの名人である「おばあちゃん」がいる。それらを体験する機会を提供すれば、人がやって来るのではないかと考えている。
彼がこうした農村で暮らすことを選んだのは、料理の素材に新鮮な食材を使いたいということと、田舎で子育てをしたいためだ。だから村内にあるレストランで腕を振るう料理の素材は、いずれも2時間前まで畑にあったものばかり。また、山本さんは料理だけでなく、農村の将来を考える会を開くこともしている。ただ、そこに集まる人たちに違和感を抱くことが多いそうだ。

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