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特集

私家版・農業界だけで通用する用語辞典

農業を始めようと都会から農村へやって来た人、結婚して農家になった人、農業の生産現場を見学に来た新人バイヤー……。こういう人たちは、農村風景よりも穫れたて野菜のサラダよりも何よりも、農村で使われている言葉にビックリする。方言に驚くのではない。特殊な用語がいっぱいで目を白黒させるのだ。そして「系統と商系ってなんですか?」などと尋ねたときの、農家・農業関係者の得意げな“上から目線”に辟易とする。こんなことを続けていては、農業が普通のビジネスの一つと見なされる日はなかなか来ないのだ。 (文・まとめ/農業用語研究班=平井ゆか、窪田新之助、永井佳史、岡本信一、加藤祐子、齋藤訓之、イラスト/まうのすけ)
農業界の言葉は
他業界には通じない

農業界にはおかしな言葉がたくさんある。「おかしな」というのは、世間からずれているということである。「世間からずれている」ということは、他のビジネス界の人々や都市生活者とは違うものの見方、考え方、行動の仕方をしているということである。
もしあなたが、他産業の人や組織と目的を共有して協働しようとしてもスムーズに運ばず、都市生活者にたくさん食べてもらえるように共感してもらおうと思ってもなかなか通じないといった悩みを抱えているならば、その原因の一つは農業と農業以外の言葉の“ずれ”に違いない。
方言ならば、それぞれに文化として守りながらも、いっしょに何かをしようと考える同士は標準語やお互いに通用する用語を使うようにするものだ。たとえば自動車の部品名や操作名に方言というものはほとんどない。自動車生産ラインには会社や業界独特の用語があるかもしれないが、部署名や役職名や会計用語はだいたいどの会社でも通じるものだ。
発達した産業は、誰にも伝わる言葉を持っている。そして、言葉の表記と定義を定め、そろえることは、産業と生活の基盤である。
それに比べて農業用語の多くは、他産業に従事している人にとって実に奇々怪々である。その代表的なものを取り上げ、“普通じゃない”ことに気づいていただくのが、この特集の趣旨である。

農業界を他業界から
隔離する策略から逃れよう

ある地方の方言は、幕府が差し向けた隠密が来ても、土地の人が何を言っているのかわからないようにするためにわざと難解な言葉にしたのだという。この伝説が本当か嘘かはわからないが、日本の農業界には、どうもそれと同じ意図で造られた特別な用語も多いように思う。
農業界でしか通じない言葉を造ることで、他産業や都市の人々を遠ざけ、農業を特別視させる。その一方で、農村の人々のものの見方、考え方、行動の仕方を一般社会とは異なる特殊なものに変えて、他産業や都市になじまないようにする。この結果、農業界を一般社会から隔離し、その言葉を作った者による独占的支配が可能になるのである。
その呪縛・束縛から逃れ、自由に発想し行動できる農業経営者となるために、一度おらが業界の言葉を共に笑ってみたい。

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