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岡本信一の科学する農業

儲かる農業のマニュアルとは?


この連載でもこの「なぜ」が非常に重要であるということを書いてきてきた。マニュアルを参考にしたい人がその理由に気づくには数多くの試考錯誤を繰り返す必要がある。それではマニュアルとして役に立たない。誰でも同じことができる代わりに、さらに新しいもっと良い手順が生まれる素地をなくしてしまうのだ。マニュアルは固定的なものではなく、常に変化し続けるものであると考えると、改善手順を付け加えることができる。すべての作業内容は改善される可能性があり、栽培の改善には終わりがないことがわかるだろう。
同様に作業時期だけが書かれていて、作物の生育ステージへの言及がないことが多い。これも「なぜ」にもつながることだが、その時期に作業を行なう理由がわからないと単に暦だけに目を向けることになり、天候条件によっては全く適さない時期に作業が行なわれることになる。
次に、作業内容について現場の状況によって作業内容が変化するという分岐がないことを指摘する。本当の意味で重要になってくるのはこの辺りのノウハウである。作物の生育状況は毎年違う。天候の良い年もあれば、悪い年もある。特に追肥等は、本来天候の良し悪しというよりも作物の成長を見て作業内容を変える必要がある。つまり、作物の状態が良ければどうする、普通であればどうする、悪ければどうする、というような分岐が必須になるはずなのだ。
耕起作業にも同じことが言える。土壌の状態も天候やそれまでの栽培履歴によって変化している。個別の圃場別に細かく耕起方法を書くなら別だが、どのような条件だと耕起をどのように行なえばいいのかという判断は、貴重なノウハウである。これも経験を重ねて初めて、どのように作業するとどうなるか具体的に語ることができるわけである。
また、一般的な栽培ごよみには、病害虫の対策が書かれていて予防策はあまり書かれていない。予防策が書かれているとすれば、予防的防除対策である。確かに大事だが、根本的な予防策ではない。
病害虫の予防には栽培環境の整備が重要であり、予防的防除よりもはるかに優先すべき事項である。例えば、繁茂した雑草は多くの病害虫を誘因する可能性があるので、除草は効果的である。特にある特定の場所での除草について、病害虫の予防策としての意味を書き加えることにより、重要な病害虫対策であることにも気づくことができるだろう。
生理障害への対策はさらに顕著だ。多くの作物でカルシウム欠乏についての言及があり、その対策としてカルシウム資材の散布が推奨されている。しかし、現在の日本には土壌のカルシウムが欠乏している圃場はほとんどない。土壌中にカルシウムがあるにも関わらず、作物がカルシウム欠乏になる理由は、作物がカルシウムを吸収できていない、すなわち根の張りが悪いか、根が吸収できない状態になっているかしかない。解決策はカルシウム資材の散布ではなく、根が吸収できるようにすることである。余談になるが、微量要素成分も含めほとんどの養分の欠乏は、土壌養分の欠乏ではなく、根の張りに問題があり、養分が吸収できていないことによるのだ。

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