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今年の市場相場を読む

動向が気になる〝その他野菜〟類 ウメ/ユズ/ギンナン/タケノコ水煮

卸売市場の入荷統計で「野菜類」に分類されている品目のなかには果樹や加工品もある。家庭や業務用で野菜として扱われているものだが、いわゆるその他野菜であり、マイナー品目なるがゆえに、過去20年でどんな変化が見られるのかが気になる。その動向から、それが不況の影響なのか、それとも日本の食文化が変遷しているのか、少なくとも方向性はわかってくる。産地側としては、それを消費のトレンドと見て放置するのか、需要再発掘を試みるのかの判断を求められているだろう。20年という月日はいうならば世代交代が完了する期間だ。食文化をどう伝承するかのテーマもある。
ウメ
入荷はやや減るも単価は半値に、梅漬けセットなどで購入の拡大を

【概況】
東京市場のウメの入荷を1993年と13年で対比すると、数量全体では4%程度しか減っていない。ただし、単価はほぼ半値になった。入荷ピークが6月にあるのは従来と変わらないが、かつてわずかながらも2月から入荷して8月まであったものが現在では5月に急増して7月に激減する状況に変化した。一気に入荷してすぐ終わる季節商材になったといえる。これは不況下における入荷パターンである。
【背景】
産地構成を見ると、93年には全国的主産地の和歌山産が40%、次いで関東の主産地である群馬産が35%と拮抗していたが、13年では和歌山が数量をさらに増やして6割を占め、群馬は25%に減っている。全出荷量のうち、75%を和歌山産が占める現状からは順当なシェアといえるものの、和歌山産の単価はキロ800円だったものが300円台と大幅に下げた。入荷が急増するから安くなったというよりは値ごろを意識した戦略もありそうだ。
【今後の対応】
市場に入荷するウメは主に家庭用の梅漬け用だ。この時期、スーパーなどの量販店では、ウメに砂糖、リキュール類、ガラス瓶までセットして店頭販売する方式が定着した。和歌山産地からも店頭プロモーション部隊が派遣されるのも近年の特徴だ。ウメ干しは手間がかかるが、梅酒や梅漬けなら自家製が簡単に作れる。過去20年の推移からは、和歌山産の南高梅だけではなく、他産地の青梅にもチャンスがあるはずだ。これも和の伝統として訴求したい。

ユズ
主産地高知は拡大だが冬至に特化、ひと手間添える風味アップの訴求を

【概況】
東京市場のユズを過去20年で対比すると、35%も入荷が減った半面、単価は12%程度高くなった。すべての月で入荷が減っているものの、冬至絡みの12月に最も増えるのは変わらない。主産地もかつてはシェア43%の高知に35%の徳島が続いていたが、現在では入荷量をほとんど落としていない高知産のシェアが62%までアップしている。出荷は27県からあるものの、この2県で東京市場では8割近くを占める。
【背景】
冬至の時期以外に一般消費のないユズだが、業務用では貴重な風味付け用の香味柑橘として利用されている。そのため、貯蔵末期の夏場に単価が高く、この時期から始まるハウス物とともに、業務用からの引きは強い。ただし、不況下で業務用利用が減っており、入荷は減少している。高知は年間供給のための数量と貯蔵ノウハウを持っていることからシェアが高いが、栽培地域は柑橘地帯から関東までと広範囲に及ぶ。
【今後の対応】
柑橘類のなかで、これほど多くの加工品がある品目はないだろう。それほど「ゆず風味」は一般消費者にも浸透している。そんな現状を見るにつけ、ユズを冬至用だけで訴求するのはいかにももったいない。汁物や和え物、薬味に刻んだ皮を添えるだけで料亭の味にグレードアップする。まさに「和食」に必需の香味料だ。家庭果樹を含め、これだけ栽培が全国に及んでいるのだからモノはある。ひと手間添える豊かさを積極的に訴求したい。

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