ナビゲーションを飛ばす



記事閲覧

  • このエントリーをはてなブックマークに追加はてな
  • mixiチェック

特集

耕種農家のための飼料穀物入門


1963年に含む5人の酪農家が集まってつくられた組織は、68年に農事組合法人森岡牧場に改変した。当時の酪農スタイルは、牛は牛舎の中で鎖につながれて飼養され、酪農の全般的な仕事は手作業で行なわれていた。その時代に、同農場は72~73年の事業で搾乳室を新設したフリーストールパーラーを導入し、自動給餌システムを採用した西日本でも最新鋭の牧場として注目を浴びた。その頃の経営規模は搾乳牛が200頭と育成牛が40頭だった。

【「とにかく、餌代を安くしたい」
発酵飼料で牛の健康状態も回復】

廣瀬さんが父の下で森岡牧場に就職したのは92年、24歳の頃である。当時の長崎県では、乳価が北海道に次いで安い状況に置かれていた。佐賀などの隣接する県よりも極端に低かった理由は、長崎県酪農連の会長職を地元の乳業メーカーが取り仕切っていたことによるのだが、事情はともかく、乳価の低迷により輸入原料に依存した飼料の調達は経営を逼迫していった。商業系の大学を出たとはいえ、経理などは門外漢だったが、パソコンに向かう日々が続いた。
かつては人が要らないものを家畜の餌に利用するのが当たり前だった。その頃から利用していたミカンの搾りかすに、食品加工工場から廃棄される大豆由来のおからを加えて、通年発酵させた飼料をつくり、給餌する方法で合理化の道を探ることとなる。そして、集中的に発酵飼料をつくって組合員の牧場に配給する「給食センター(以降、TMRセンター)」を立ち上げた。このようなTMRセンターは全国各地に展開しているが、20年前に先取りで導入していたというわけだ。
発酵飼料の原料は、大豆由来のおからとミカンの搾りかすに、飼料会社から購入したトウモロコシと乾草(アルファルファ)、イネ科の自給草類を混ぜて、発酵させる。ミカンやおからに含まれる菌類に任せて、人工的に菌類を加えることはしない。同農場の搾乳牛は、1頭当たり約35kg/頭の餌を必要とするが、そのうちの90~95%を発酵飼料が占める。現在、この給食センターは森岡牧場と近隣の酪農家向けに約1000頭分の餌を通年、供給している。
なお、同農場では国内で生産するデントコーンサイレージは使っていない。輸入トウモロコシの圧ぺんフレークの方が栄養価、品質ともに安定しているとの考えによる。とはいえ、常に原料価格を照らし合わせた試行錯誤が続くなか、5年前からベトナム産のデントコーンサイレージの使用を始めている。

関連記事

powered by weblio