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このような状況が進んだ背景を奥野氏はこう説明する。
「対米貿易黒字解消のために穀物の見返り輸入がなされ、人間が消費しきれない余剰穀物を効率よく消費するために養鶏産業が発展し、副産物として安価な大量の鶏卵が市場流通したという側面も否定できるものではない。そのため、国内産の鶏卵自給率は96%といわれているが、その一方で、鶏卵生産を支えている飼料自給率は10%程度。ほぼ輸入穀物に依存しているのが実情である」
養鶏農場では配合飼料メーカーから配合済みの養鶏用飼料を購入し給与するのが一般的である。同社では、85年に自家配合工場を農場敷地内に設置し、トウモロコシや大豆粕、飼料用米、魚粉をベースに単味飼料を購入し、配合し給与する体制をとってきた。年間の飼料製造量は約600t。原料の多くは複数の飼料会社から調達しているが、そのうちトウモロコシやコメをはじめとする穀物の割合は400tになる。
奥野氏は中国やインドをはじめとする新興国の穀物需要の増大をはじめ世界的な穀物価格の高騰が起こり始めた08年頃から飼料穀物の輸入依存体質に不安を感じ始めたという。当時、同社では、飼料コストが鶏卵の生産コストを大きく圧迫し始め、この先も安定的に鶏卵生産を続けることのできる環境について考えるようになっていた。
一方で、鶏卵のブランド化を図ろうとすると、「地たまご」として地元で生産販売しているとはいえ、その飼料は輸入穀物に依存し、配合飼料メーカーに任せっきり――。これでは本当に地域に密着し、「地元由来」を訴えることができるのか?という疑問があった。
生産・販売の両面において一歩前進させる意味で、09年にちょうど注目を集め始めていた「飼料用米」を地域で取り組むことを提案した。初年度は4tを1000羽の鶏に与え、ハンドリングや給餌方法など、さまざまなノウハウを得た。徐々に契約面積を増やし、今年は8団体(農家)で20ha分の作付けを確保している。
【補助金依存の飼料用米への懸念と
トウモロコシ生産者との出会い】
国産飼料化の救世主に躍り出た飼料用米だが、政策の充実による極度の補助金依存には当初から懸念していた。「地たまご」のブランド化が極度の補助金依存の飼料用米に支えられてとなると、制度が変わったときにブランド化そのものが崩壊するリスクが付きまとう。これは、実需者側が飼料米を積極的に利用していることをアピールしづらい背景の一つになっている。
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