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小川幸夫の虫の世界から見る農業

見えない益虫、寄生蜂

筆者の農場でトマトの収穫が始まった。少量多品目の生産スタイルながらトマトは比較的多く、4000本を植えている。 トマトの害虫で困るのがオオタバコガだ。この幼虫はナス科の大害虫で、種の周りのワタの部分を好んでよく食べる。結果、作物の中に進入してしまい、天敵昆虫からすると捕食しにくくなる。トマトやピーマン、ナスなどは夏の主力品目になるため、このオオタバコガの被害に遭えば大きな損害が出る。
現在、ビニールハウス内には狩蜂の一種であるフタモンアシナガバチが今年も30個くらいの巣をつくって子育てを始めた。最初の働き蜂たちが生まれて子育てが活発になった今、フタモンアシナガバチたちはハウス内を巡回してオオタバコガの幼虫を必死で探している。フタモンアシナガバチは、トマトの葉を食べているようなまだ生まれたてのオオタバコガの幼虫を肉団子にして巣に持ち帰ることができる。しかし、オオタバコガ幼虫がトマトのヘタ部分から内部に進入してしまうと、フタモンアシナガバチたちも捕まえて引きずり出すのは難しい。
この捕まえにくいオオタバコガを殺してくれるのがオオタバコガコマユバチだ。オオタバコガコマユバチは、オオタバコガの幼虫に卵を産み付け、その卵はオオタバコガの幼虫の体の中で成長してやがて中から飛び出してサナギになる。もちろん、このときにオオタバコガの幼虫は死に絶える。ホルモン剤であるトマトトーンで人工授粉をしている際、オオタバコガの発生状況を確認するが、今年は当初からこのオオタバコガコマユバチがオオタバコガの若齢幼虫に寄生していた。そのため、今はオオタバコガの発生が抑えられている。

寄生蜂はまさにエイリアン

寄生蜂たちを一言で表すと、あの映画のエイリアンになる。まさに怪物というか、化け物だ。映画にあったエイリアンが人間に卵を産んで、その人間の中からエイリアンが飛び出してくるシーンを想像するとわかりやすいだろう。
寄生蜂たちは自分たちが好む特定の宿主に卵を産み付ける。ハチの卵が孵化するとハチの子供である幼虫は、宿主の害虫がすぐに死なないようできるだけ致命傷を与えないようにして食べながら成長する。なぜ致命傷を与えないかというと、宿主が死んでしまえばフレッシュなものを食べられなくなるからだ。このときだけはある意味、共生になる。だが、ハチの幼虫が十分に成長、もしくは宿主の内部を食べ尽くすと宿主は死に絶え、ハチの幼虫は宿主の中でサナギになるか外に飛び出してサナギになる。寄生蜂の多くは人間の目では見にくい微小なハチだが、さまざまな昆虫に寄生してくれることで害虫の大量発生を抑えてくれている。
寄生蜂はオオタバコガコマユバチ以外にも数多く存在する。畑にいるものをいくつか紹介したい。

コマユバチ:コマユバチとは、寄生する宿主からサナギになるときに飛び出してマユをつくる寄生蜂を指す。オオタバコガコマユバチのほか、モンシロチョウの幼虫に寄生するアオムシコマユバチ、ハモグリバエに寄生するハモグリコマユバチなどがいる。オオタバコガコマユバチは一つの幼虫が宿主から出てきて一つのサナギになるのに対して、アオムシコマユバチはモンシロチョウの幼虫の中からたくさんのハチの幼虫が出てきて黄色いマユの塊をつくる。筆者は以前、害虫の卵塊と思っていたが、この小さなマユの塊はハチのサナギだった。間違ってもつぶして殺さないようにされたい。

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