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座談会

農業経営者が覚悟すべき交付金制度の今後


昆 政府はまず何をやればいいと思いますか。
本間 「体質強化と競争があって、大きなハードルを越えた人たちが、最終的な直接支払の対象になる」というメッセージを出すべきだと思います。ハードルやゴールが設定されたならば、生産者は「これを自分がクリアできるのか」と考えるはずで、できないと思ったら早く撤退するし、できると思う者は競争して残っていく。その工程表を作らなくてはいけないのに、それがないものだから、なんとなく現状がずっと続くんじゃないか、と生産者は淡い期待を抱いてしまう。短期的には、政府がくれるお金はもらっておけばいいとは思うけれど、これはいつ打ち切られるかわからないボーナスであって、こんなものに頼って経営をやってはいけない、と肝に銘じていただきたい。
昆 高木先生はいかがでしょう。
高木 私も簡単に経緯を振り返りますと、平成12年末、自民党が「40万経営体を前提に、経営を単位にした仕組みを作る」と宣言した後、ずっと議論が進まなくて、やっとできたのが品目横断でした。ところが品目横断は、品目別をただ足しただけで、経営を単位としていない。結局、品目別に対処しているだけだから構造改革がもっとも進んでない稲作で、さまざまな矛盾が生まれました。
それから政権が民主党に移った3年間は、しがらみのないかたちで何か変わるかもしれないと最初は期待もしていたんですよ。しかしそれは、あっという間に打ち砕かれた。よかったのは、自給力向上対策で飼料用米や加工用米を生産調整から切り離したことぐらいでしょうか。その民主党が打ち出した農業者戸別所得補償は、経営所得安定対策と名前を変えて、金額も半分になりましたが、そこから何も抜け出せていません。しかも半額になったのはいいとしても、所得が減った分は何かしろという意見が通って、今度は飼料米に10万5千円の交付金がついた。あれは何かを下げたらその分取り返すという政治であり、行政であり、団体のDNAですよ。結局、ほとんどの関係者が農業を持続する経営として見ていないから、そういう発想になってしまう。ばら撒きで手に入るお金は、私から言わせれば不労所得ですよ。人を動かす意味では、もっとも悪い。とりあえずもらっておくという態度でもいいんですが、それをどういう風に経営に生かすかで大きな差が生まれる、次のステップに入った気がしますね。

昆 品目別の問題を指摘されましたが、私は現在の品目別に交付金を与えるのは、WTOルール上違反でないのかと思っていたんですよ。しかし農政アナリストの山下一仁さんに聞いたら、そんな簡単な話ではないらしい。国際貿易ルールやその交渉の中でやっていくためには、どういうことになるのでしょう。

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