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新・農業経営者ルポ

絶望の中で未来を見出した起業家


でき上がったイチゴは品質別に売り先を分けている。トップブランドの「MIGAKI‐ICHIGO」は百貨店や個人消費者向け。1kg当たりの平均単価は3000~4000円で、最高値は1万5000円にもなる。これにランクするには糖度と酸度の比率や外観などで厳しい条件をクリアしないといけない。それほど丹精して育てるからこそ「」である。別名「食べる宝石」とも呼んでいるように、パッケージには宝石模様のイチゴのデザインをあしらっている。13年に「グッド・デザイン賞」を受賞した。セカンドブランドは大手量販店向けで、平均相場の同1.5倍ほどの価格帯。残りは市場出荷だ。
トマトはすべて大玉。いまは全量を市場に出荷しており、こちらのブランド化はこれからになる。そのため、大玉でも8~9度の高糖度にする技術を試している。

「ズノウ」の流出を防ぐ

ところで、岩佐が考えている東北地方の最大の課題は「ズノウの流出」だ。「ズノウ」というのは優秀な人材のこと。彼ら彼女たちを地元にとどめておくには「仕事」「学び」「戯れ」の3つが必要だという。仕事については言うまでもない。学びについては既述したようにNPO法人で教育事業をしている。第一線で活躍している各業界の人材を呼んで、地元の学生たちを対象にボランティアで仕事観を話してもらっている。
「山元町には鉄道がないので、学生たちは好奇心があってもなかなか好きなように動き回れない。それだったら刺激的な人たちをこちらに呼び込もうと考えたんです」
それから「戯れ」とは遊びのこと。たとえば、山元町の海岸には人気のサーフポイントがある。こうした場所を発見しながら、地元の遊びを提案していく。
「仕事」では具体的なビジョンがある。10年以内に100社で1万人の雇用を生むということだ。そのために自社の事業を拡大する。プランの一つは夏イチゴの生産を実現させること。日本では夏場に平場でイチゴを作ろうとしても、暑さが厳しいためまともに生育しない。この時期に消費される大部分は米国からの輸入品である。ただ、国内でもごく一部の高冷地では生産しており、外国産に比べて2倍程度の高値で取引されている。これに参入できたら大きい。
9月からは農業のフランチャイズ化と、それに連動した独自の新規就農支援事業も始める。新たにイチゴを作りたい人たちを募り、(株)GRAが持っている生産システムや栽培法、販売の仕方などを教え込む。彼らが独立したら、イチゴをGRAが受託販売する。

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