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第二特集

コメ先物、本上場せよ


流通業者にとってはどうだろうか。たとえば、現在の現物相場が1俵1万6000円で、将来は1万7000円になると予想したとする。すぐに先物市場に参加して1万6000円で買い入れれば、予想のとおりに現物相場が1万7000円になったとしても、1万6000円で手に入る。
もし先物取引をした後にその予想が外れそうになれば、反対売買をすれば損失を回避できる。

価格発見と
需給調整などの機能

このほか先物市場には「価格発見機能」もある。つまり、取引所が先物価格を公表することで、それに基づく取引が行なわれ、適正な価格が形成されていく。また、多くの売り手と買い手が集まることで、需給の動向や産地別の作付け、天気の様子などの情報も知れ渡り、これも適正な価格づくりに役立つ。
当然ながら先物市場は需給の安定にもつながる。稲作経営者は先物価格をにらみながらコメの作付面積を決めるようになるからだ。
米価暴騰を理由に1918年(大正7年)に富山県の漁師の主婦たちが起こした米騒動。米価政策の改革が打ち出される中、先物取引も全面停止となった。ところが、その意に反して米価はさらに高騰。指標となる価格を失ったことで一気に買いが進んだのである。先物の必要性は歴史が証明していることなのだ。
江戸時代にこの優れた取引システムを世界で初めて登場させたのは大阪・堂島のコメ商人である。それがいまや世界の穀物市場で活用されている。試験上場の最終年に入ったいま、米価が急速に低迷しているのはコメ業界を変革する好機でもある。そのために業界関係者を挙げていまこそ、先物市場の意義を考えてみるべきときである。

COLUMN

なぜ先物市場は72年間も上場されなかったのか? 国による経済統制がなくなったいま、JAが強固に反対していることが大きい。05年には認可寸前までいったものの、JAによってつぶされた。しかし、民主党に政権交代したことで、政治力が弱まった11年8月、試験的であるとはいえ再上場されることになった。
それでもJAは本上場を断固許さない構えでいる。その主な理由は、「主食であるコメを投機的なマネーゲームの対象とすることは食料安全保障の観点から問題がある」ということ。しかし、そもそも価格が下がっている中でコメは投機的なマネーゲームの対象になりうるであろうか。投資家にとってそれほど大きな価値があるようには思えない。
たとえ投機の対象になったとすれば、それは日本の稲作農家にとって歓迎すべきではないか。なぜなら、米価が高騰すれば収入が増えるからだ。そうなれば増産意欲が沸き、新規就農者が増えて、水田のフル活用で耕作放棄地は減る。これこそJAグループが望んでいる日本農業の未来ではないのか。

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