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岡本信一の科学する農業

収益の上がる生産効率化とは

以前にも大規模化した際の問題点を作物の歩留まりという観点から書いたが、今回は、生産効率と収益性について考えてみたい。 生産効率を高めるというのは、収益を増やすために行なうのであって、収益が下がるような生産効率の追求であれば、大規模化は失敗だったということになってしまう。では、どのように生産効率の追求をしたら良いのだろうか。
収益が良くならないのは
効率化の方向性が違うから

大規模化して雇用が発生するようになると多くの方は人材の活用に頭を悩ませる。作業効率を高めるために機械の導入や更新などが必要になったり、圃場の枚数が増えることで作業管理なども煩雑化したりする。この管理手法に大きな差があり、収益に差がつくことが多いのである。
答えを先に書いてしまえば、生産の効率化が誤った方向に向かうと、収益が下がるということが頻繁に起きている。その際に収益性に最も大きく影響しているのは作物の歩留まりである。歩留まりが低ければ、収益性は落ち、歩留まりが高ければ収益性は増える。そして、その歩留まりに目を向けなければ収益性は良くならない。生産の効率化は、その歩留まりや品質、収量を維持できる段階で取り組むべきことなのだ。
生産の効率化の方向性が間違っている事例を挙げてみよう。生産の効率化を始める際によくあるのが、無駄に費用がかかる部分を削るという考え方である。
生産コストのなかで大きく占めるが人件費と機械費である。そのため、雇用と機械という2つの項目で改善を図ろうとする。
●雇用している人を効率的に配置し、無駄のないように活用する
●機械の運用効率を高め、最大限動かせるようにすることで機械投資の回収を図る
私はこのような考え方は基本的に間違っていると思う。もちろん、非常に重要なことではあるが、生産したものの歩留まりが落ちたり、品質収量が落ちているようではお話にならないからだ。先に書いたような点のみに重点を置くと、生産効率の追求ということが優先され、意外なほど作物の出来が忘れられてしまうのである。
この失敗は、工業製品に置き換えて考えてみるとわかりやすい。工業製品を製造する場合、品質や歩留まりを上げることが収益を増やすための優先事項であり、それが満足できるレベルになってから、一つ一つの工程の見直しを行なって、さらに生産性の向上を図るのが基本である。
品質も歩留まりもあまり良くない工場が工程の見直しや省力化に挑んだ場合、以前より品質や歩留まりが悪くなるかもしれない。そうなれば肝心の製品の競争力を失うことになってしまう。何しろ歩留まりが悪く、品質も悪いのだから利益率も悪く、販売するのも困難になる。そのような品質が悪くなるような見直しは行なわない。

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