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【シリーズ水田農業イノベーション】
実況中継!!全国の乾田直播 2014年度編
- 編集部
- 第14回 2014年09月29日
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第6回 雪国直播サミット in Miyagi
播種スタイルの多様化で見えてきたものは
気温が低く、冬季は降雪のために作業ができない。そのハンデを持ちながらも乾田直播に挑む水田経営者が交流する場、それが雪国直播サミットである。ハンデであるはずの作業できる時間が限られているという条件は、経営者の頭脳をフル稼働させ、合理的な判断や新たな挑戦を突き動かしてきた。なぜなら、実現できないと言われることほど、試行錯誤を重ねて成功に近づく道のりが充実するからだ。
地域を超えた交流は、より厳しい条件で挑んでいる勇者との出会いをもたらす。雪国サミットは、北海道土を考える会、東北土を考える会の会員を中心に、初回を含む奇数回は北海道で、偶数回は東北で毎年夏に開催され、北日本に乾田直播の輪を広げてきた。
6回目を迎えた今年は、“雪国”の中では比較的温暖な宮城県での開催となった。参加者は東北、北海道のほかにも栃木、千葉、新潟、熊本の各県から水田経営者が駆けつけ、総勢約90名。「播種スタイルの多様化で見えてきたものは」というテーマのもと、圃場視察と検討会を通じて、経営における乾田直播・無代かき・湛水直播のあり方について情報が飛び交った。
【圃場視察:乾田直播の技術を
基軸に汎用化水田へ】
宮城県の沿岸部の水田地帯は2011年3月の東日本大震災で津波の被害を受けた。震災前からの取り組み、そして復興の過程で、それぞれの経営条件のもと、乾田直播に意欲的に取り組んでいる。今回の視察では、名取市、東松島市、登米市の5カ所の乾田直播圃場を回った。
【3.4haの大区画圃場】
最初の視察先である(有)耕谷アグリサービスは約1700haの水田が浸水した名取市に位置する。当時の経営面積76haのうち約9割が浸水した。復興の過程で、東北農研センターの主任研究員、大谷隆二氏らの協力を得て、30a規模の10枚を合筆して3.4haという大区画圃場を造成して合理的に乾田直播を含むコメ―小麦―大豆の2年3作を実践する取り組みだ(本連載14年4月号、5月号を参照)。国や県が手がける基盤整備の方向性として、将来的に3~4haの圃場になることを想定し、その先駆的事例を提示した形だ。
【トウモロコシにも応用できる】
次に訪れたのは東松島市の(有)アグリードなるせの乾直圃場である。震災当時、経営面積50haのうち約8割が浸水被害を受けた。がれきの少なかった33haについては縦浸透型除塩工事を経て、同年の作付けに間に合わせた経緯がある。鉄コーティングの湛水直播も実証しているが、乾田では苗立ちは6・7割が確保できた。代表の安部俊郎氏は「除草剤散布のタイミングがずれて今年は草が多かった……」と口にした。
さらに畜産農家との連携を視野に入れ、今年からは子実トウモロコシの栽培を始めた。畑作技術体系の導入により、新たな作物への導入にも取り組みやすい素地ができている。
【水系単位で作業効率を上げる】
1日目の最後の視察先は登米市の(有)エヌ・オー・エーだった。専務の高橋伸氏は「ドリルシーダーによる条間15cmの密植栽培でも、最近の天候は秋の気温と日照時間を確保できるので歩留まりに影響がない」と話す。収量を上げるためだけでなく有畜農家ならではの「コメをつくりながらワラをとる稲つくり」を目指している。今年から作業受託面積の約6割にあたる約5haを1区画に集約できたため、開水路を制御することで作業効率を上げる一方、受託料を下げて地域の同意を得ている。「経営面積の約8割でひとめぼれ、つや姫、ササニシキも酒米(契約栽培)も乾田直播でやっています」と話すように乾田直播が中核を担っている。
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