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海外レポート

最先端の施設園芸が導く生産・流通イノベーション、オランダの「スマートアグリ」を検証する

7月上旬、本誌執筆陣の農産物流通ジャーナリスト・小林彰一氏がオランダを訪ね、最先端施設園芸「スマートアグリ」を視察した。伝統的な運河沿いの園芸地帯ウエストランドの100km以上北にある施設園芸団地アグリポートA7はその際たる例だ。巨大なハウス群以外には何もない地域で、北極海からの強風が風力発電の羽をのように回しているのが印象的だったという環境のなか、ルートA7号線沿いの広大な敷地に新設されていたその施設で氏が目にしたものとは? 産地型市場の廃止の実態を含めてレポートする。

大量エネルギーを使う
大規模野菜工場?

昨年、NHKが特集で紹介して以降、オランダのこのスマートアグリへの視察が急増した。多くの場合、その目的は世界最先端といえるスマート(賢い)なアグリ(農業)を“見学”するものだ。そこでの理解は、「スマートアグリとは、ICT(情報通信技術)を利用した農業のことで、天候のチェックや、農作業スケジューリングから栽培環境の制御まで、すべての農業経験をシステム化して行なう人工培地による大規模植物工場」「発電機や電動設備、空調設備が必須で、多量のエネルギーを消費する農業」「最少人数の管理者が、農地ではなく、事務所のコンピュータで栽培環境の調整を行なう」というものだろう。
オランダは、このICTによる園芸農業で世界第2位の農産物輸出国になっていることから、なかにはTPP対応で輸出農業の振興が必要な日本にとって、参考になる事例ではないかという問題意識で見る向きもある。実際、経済産業省などは「スマートアグリシステム」の日本国内での普及やシステムの輸入などで、アクションプランを作成する動きさえある。しかし、結局は「日本とオランダでは、自然環境、エネルギー利用、需給環境が、根本的に違いすぎて参考にならない」という結論になりがちだ。
しかし、筆者がオランダ現地を視察・取材してみて、表層的なシステマチックな巨大野菜工場という表看板を支えているのは、産地型市場を廃止した独自のマーケティングシステム、技術支援体制や技術革新の歴史、付加価値加工などを含むロジスティック、広報・教育システム、農業者組織、農地政策、経営者意識などを含む、オランダ独特の国民性や精神性の歴史であるということがわかった。そこに我が国の農業や流通システムにとっても有益な“スマート”さを見いだすことができる。

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