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動物福祉の考え方
家畜商という男の世界で長年やってきたものの、経営の内容を見ればやはり女性らしい。その最たるものは経営の三本柱の一つである動物福祉の実践。たとえば、妊娠中の母豚を狭いに入れることなく自由に歩き回らせるフリーストールを導入している。実際、2人の息子を出産した前田にとって、妊娠中の母豚にストレスをかけることはとても耐えられなかった。広い部屋の中で群れになっていても各個体を識別できるよう、1頭ずつの耳にはICタグを付けている。
分娩ゲージは自動で昇降する。母豚による子豚の圧死を防ぐためだ。通常のゲージでは出産後、授乳時に母豚が立ち上がってすぐに屈んだ際、下にいる子豚を押しつぶして窒息死させる事故が頻発している。昇降式では母豚が立ち上がると、母豚が横たわっている床だけが30cmほど持ち上がり、子豚がいる床と高低差をもって隔離される。導入前には5%あった圧死率は導入後にはほぼゼロになった。
出荷適期の肉豚を
自動選別するシステム
六つある農場の一つである旭志農場では、豚250頭を放し飼いの広い部屋から給餌する部屋に移動させる途中で、自動的に体重を計測する「オートソーティングシステム」を導入している。このシステムは豚1頭だけが通れる大きさで、床は体重計である。豚は毎日三食以上を食べるための移動の際にはこの装置を必ず通る。この装置で顧客の要望する体重を設定すると、豚が乗った際に自動で体重を量る。もし出荷に適した体重であれば、箱の中の出荷部屋に向かう扉だけが開く。逆であれば、給餌の部屋に通じる扉だけが開く。
250頭の中から顧客が望む体重の豚を探し、その豚だけを別の部屋に追い込むのは従業員にとって負担のかかる作業である。さらに、従業員に追いかけ回される豚にとってもストレスになる。それは結果的に肉質を落とす。
周辺環境への配慮
二本目の柱は自然・生活環境への配慮。各養豚場の周辺には住宅やホタルの生息地がある。家畜糞尿の臭気を外部に漏らさないよう、ほとんどの畜舎で発酵床を採用している。発酵床というのは、おがくずともみがらに好気性細菌を混ぜて発酵させたもので、豚の排せつ物を分解する過程で臭いを抑える。
エコフィードと飼料設計
三本目の柱は食品残さから飼料(エコフィード)を製造することで、08年に着手した。パンや菓子、麺、豆乳、焼酎かす、アイスクリームなどを原料に液体の飼料(リキッドフィーディング)を自社で造っている。その製造工場に行ってみると、アイスクリームのタンクから甘酸っぱいにおいが立ち込めている。工場の中には小麦粉の袋や麺類の袋が山積みになっていた。
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前田佳良子 マエダカヨコ
セブンフーズ(株)
代表取締役
1960年、熊本県大津町生まれ。尚絅大学短期大学卒業後、合志畜産(現セブンフーズ)入社。2004年、代表取締役に就任。熊本県農業法人協会副会長、熊本県指導農業士。
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