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海外レポート

米国食農紀行(1)貧困との戦い

この夏、IVLP(インターナショナル・ビジター・リーダーシップ・プログラム)という米国国務省のプログラムに招待されて全米を横断した。3週間少々という限られた滞在期間ではあったが、米国社会における食と農の役割について垣間見てきた。負債総額180億ドルという自治体として米国史上最大の財政破たんから1年を迎えた、ミシガン州デトロイト市から話を始めたい。
市街地のホームレス

市街地に入ると目を見張った。ガラス張りの円筒形をしたビル群が天を突き刺すように立っている。その真ん中にあるビルの最上層の電光掲示から青い光を放っているのは「GM」の文字だった。ここは、ビッグスリーの一角であるゼネラル・モーターズが本社を構え、デトロイトっ子たちが「Rencen(レンセン)」と呼ぶモーターシティーのシンボルだ。
筆者を含む参加者8人と通訳3人はこの日から4日間、レンセンとは通りを挟んで真向かいにあるホテルに滞在することになった。毎朝ホテルを出るたびに気になったことがある。目の前の交差点をうろつくホームレスたちの姿だ。レンセンの裏にはデトロイト川が流れ、対岸にはカナダの街が見える。川岸には、両国間を行き来する人たちやレンセンで働く人たちのための大きな駐車場がある。ホームレスたちは、駐車場から出てきたばかりの自動車の主に金をたかっているのだった。
ホームレスの姿は1週間ほど前までいたワシントンDCでも見かけたが、両者では年齢も表情もはっきり違う。大ざっぱを承知でいえば、ワシントンDCでは若くて明るく、デトロイト市では年がいっていて暗い。ワシントンDCでは目つきの鋭い、自ら信ずるところがあってこの道を選んだという意志の強さがある。それを通行人も心得ているのか、若い女たちが若い男のホームレスと何やら真剣に話し合っている姿をたびたび見かけた。一方、デトロイト市では失業したからやむなしという印象が強い。彼らには真に語り合う相手もいないのかもしれない。
だからなのか、腹に抱え込んだ恨み辛みも時に吹き出す。ある朝、川岸の公園に行ってみると、ホームレスと思しき黒人が大声を上げながらごみ箱を何度も蹴っ飛ばしていた。筆者と一緒にプログラムに参加した男性のHさんにしても、夜道を1人で歩いていたところ、突然、ホームレスから「GO TO HELL!(くたばっちまえ!)」とののしられたそうだ。デトロイト市での滞在中に筆者たちが折に触れて見聞きしたのは、こうした貧困の実情とそれに立ち向かう町ぐるみの活動だった。

空き地にビニールハウス

レンセンから車で10分ほど離れた、窓ガラスが所々で割れた建物群と線路に挟まれた薄暗い路地を抜けると、青空の下に明るい光景が広がった。どん詰まりの空き地にあったのはビニールハウスだ。側面が開いており、青々と育った野菜が姿を見せていた。

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