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【土門「辛」聞】
2012年産米を高値につり上げて崩壊に近づけた農協系統の米流通支配
- 土門剛
- 第122回 2014年10月27日
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質問 農家を落胆させた米価の急激な大幅下落。その原因は? 土門 全農と農協が高い概算金で集荷したことが高値競争を煽った。これが原因で米が高値で取り引きされるようになり、深刻な消費減退を招いたのだ。
質問 急激に下落したのはなぜか?
土門 全農県本部が高い概算金を示したことだ。全農秋田県本部(全農あきた)が、あきたこまち(1等・60kg)に示したのは、1万3500円。前年産比2500円高、率にして22.7%アップ。これに火を注いだのが、農協が独自に大幅加算して1万6000円で買い取り集荷に踏み切ったJA秋田おばこだ。
質問 米集荷で最大規模の農協だ。
土門 そうだよ。米どころ仙北平野で年間8万tを集荷する。コメ市況専門誌「日刊米穀市況速報」(東京)の2012年9月18日付け配信記事は「集荷奨励で独自加算、最大1万6000円(秋田おばこ農協)」と異常な高値での異常な集荷ぶりを克明に伝えている。
「秋田おばこ農協では、集荷奨励のため県本部の概算金にJA独自に800円を加算し、あきたこまち1等で1万4300円に設定している。また、『早場奨励集荷』として同19日まで1500円、20~23日まで800円を上記価格に加算する。別途、『契約達成奨励』加算として200円があり、最大で1万6000円となる。また、上記以外を対象に、カントリーなど施設加算600円(1万4300円+600円)もある。集荷目標は、加工用米などを含めて145万俵」
質問 この動きが火を注いだのか。
土門 あらためて米相場の神様、本間宗久(1724~1803)の格言を思い出したよ。
「米価がどんどん上がると、諸国で風説が出回り、相場はますます盛り上がる。そうなるとご用米買い上げの噂なども流れ、さらに上昇に加速がつき、自分も買わずにいられない。こんな時は、気持ちを切り換えて売りに回ることが大事。これはつまり、火中に飛込む思い切りで実行すべきである。相場全体が騒ぎ立っている時、人々が西に走るなら、自分は東に向かう。こうすれば大きな利運に乗れる」
質問 ご用米買い上げとは?
土門 1730年(享保16年)の「買米令」のことを指しているみたいだ。幕府が市場の米を買い上げ貯蔵して米価の引き上げを促すことだ。2012年産の場合は、全農や農協などになるのかな。それはさておき、同じことを戦前の米相場師が、「豊作に売りなし、不作に買いなし」という相場格言を残している。
質問 当時の需給状況は?
土門 相場上昇の素地はあった。11年産が、東北大震災で供給が減り、同年産の端境期(7月)の在庫水準が例年より40万tほど少なく需給事情がひっ迫していたこと。それが10年産の在庫水準も低く、スーパーや外食など大手ユーザーに契約数量を納入できない「欠品」という事態もあった。あれやこれやで、買いにますますドライブがかかったようだ。
土門 全農県本部が高い概算金を示したことだ。全農秋田県本部(全農あきた)が、あきたこまち(1等・60kg)に示したのは、1万3500円。前年産比2500円高、率にして22.7%アップ。これに火を注いだのが、農協が独自に大幅加算して1万6000円で買い取り集荷に踏み切ったJA秋田おばこだ。
質問 米集荷で最大規模の農協だ。
土門 そうだよ。米どころ仙北平野で年間8万tを集荷する。コメ市況専門誌「日刊米穀市況速報」(東京)の2012年9月18日付け配信記事は「集荷奨励で独自加算、最大1万6000円(秋田おばこ農協)」と異常な高値での異常な集荷ぶりを克明に伝えている。
「秋田おばこ農協では、集荷奨励のため県本部の概算金にJA独自に800円を加算し、あきたこまち1等で1万4300円に設定している。また、『早場奨励集荷』として同19日まで1500円、20~23日まで800円を上記価格に加算する。別途、『契約達成奨励』加算として200円があり、最大で1万6000円となる。また、上記以外を対象に、カントリーなど施設加算600円(1万4300円+600円)もある。集荷目標は、加工用米などを含めて145万俵」
質問 この動きが火を注いだのか。
土門 あらためて米相場の神様、本間宗久(1724~1803)の格言を思い出したよ。
「米価がどんどん上がると、諸国で風説が出回り、相場はますます盛り上がる。そうなるとご用米買い上げの噂なども流れ、さらに上昇に加速がつき、自分も買わずにいられない。こんな時は、気持ちを切り換えて売りに回ることが大事。これはつまり、火中に飛込む思い切りで実行すべきである。相場全体が騒ぎ立っている時、人々が西に走るなら、自分は東に向かう。こうすれば大きな利運に乗れる」
質問 ご用米買い上げとは?
土門 1730年(享保16年)の「買米令」のことを指しているみたいだ。幕府が市場の米を買い上げ貯蔵して米価の引き上げを促すことだ。2012年産の場合は、全農や農協などになるのかな。それはさておき、同じことを戦前の米相場師が、「豊作に売りなし、不作に買いなし」という相場格言を残している。
質問 当時の需給状況は?
土門 相場上昇の素地はあった。11年産が、東北大震災で供給が減り、同年産の端境期(7月)の在庫水準が例年より40万tほど少なく需給事情がひっ迫していたこと。それが10年産の在庫水準も低く、スーパーや外食など大手ユーザーに契約数量を納入できない「欠品」という事態もあった。あれやこれやで、買いにますますドライブがかかったようだ。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
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