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イベントレポート

視察セミナー「農業にとっての顧客満足」


同時に、有機農産物は何をもって美味しいのか、美味しさを証明したいと考えた。特に、有機栽培を選ぶ顧客は美味しいものを求めている。顧客に商品として有機農産物を届ける以上、美味しいものを届けたい。そう考え、えぐみを感じる硝酸イオン、糖度、抗酸化力、ビタミンCの4つを定期的に調査するようになった。そのデータを踏まえて、いつでも良い品質の野菜を栽培できる技術、つまり、再現性を高める栽培技術の確立を目指しているという。
「数字は絶対的な評価ですので、他の人に評価してもらうために便利です。これも素人感の表れかもしれませんが」
玉造氏は、今まで以上に経営能力やマーケティング力、知識が求められ、経営者の責任が増す時代になるだろうと考えている。そのため、さまざまな情報を本や人を通じて収集し素人感覚を活かしつつ自問自答している。

経営者以上の客は来ない
四万騎農園 
茨城県かすみがうら市

次に訪ねた四万騎農園は、栗の苗木、生栗および加工品を生産、販売している。販売所から見渡せる農園は、栗の木が樹齢ごとに整然と並び、手入れが行き届いていて美しい。
栗はその品質と価値が顧客に認められ、キロ平均3400~3500円という高価格帯で販売されている高級品である。
四万騎農園を経営する兵藤保氏(80)は、父が戦前に開拓して始めた栗農園を受け継ぎ苗木生産に力を注いできた。昭和40年代には栗の苗木の需要ブームがあり経営も好調だったが、経営に余裕があるうちに先手を打ちはじめた。
それは、市場では安くしか売れなかった生栗を贈答品として販売することだった。その後、渋皮煮やふくらませ煮、マロンジャムなどの加工品を販売するに至っている。兵藤氏は、常に情報を収集して時代の変化を捉え、自分自身と顧客に向き合う経営を続けている。

加工品の前に
最高品質の生食を

生栗を贈答品として販売するようになったのは、経済成長の時代、市場での栗の価格が安すぎると考えたからだという。当時、品質については市場でも高い評価を受けていたが、平均価格よりキロ20~30円高い程度にとどまっていた。一方、従業員の人件費は上がる。このままの価格では経営が成り立たない。そこで、所得が多く、品質をわかってくれる人たちを顧客にしようと考えた。
品質に徹底的にこだわり、「自分だったらときと場合によっては買う」と考え、贈答用としてキロ4200円という高価格をつけた。パッケージのデザインは、ある高名な日本画家も手によるもの。「当時の私の経済には不釣合いだった」という金額を投資し、栗農園の趣を演出している。

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