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特集

我が家の農産物の原価はいくら?原価計算・経営分析の意義と活かし方

全農各県本部が示した概算金が今年は大幅に下落した。さらに全銘柄平均の相対取引価格は、玄米60kg当たり12,481円(2014年9月)。2010年産を下回る大幅な下落を記録した。あらかじめ想定できていた農業経営者にとっても大幅な収入減が見込まれ、農家の懐はいよいよ厳しくなることが予想される。これまでの米価の動向に対して、大幅に減額になったことへの反発があるのは当然のことで、数年先を見越した計画的な価格形成がなされてない現状は、自衛の術を身につけざるを得ない状況である。コメをいくらでつくったら利益が出るのか? どうやったらその価格でコメをつくれるのか? 改めて見直したいのが原価計算である。限られた面積で効率的な農業生産を目指してきた時代から続く面積当たりの収益評価に加えて、労働時間当たりの収益という指標も規模拡大の時代に再確認いただきたい。
(取材・まとめ 齋藤訓之、鈴木工、加藤祐子)
巷間「米価が下がった」ことは話題になるが、近年、全体的にコメの生産費も下がっている。地代家賃の低減によるところが大きいが、物価と製造コストはお互いに関係し合うものだから、米価が下がる傾向の中で生産者がコストダウンに努めている結果も含まれているだろう。

コストダウンを継続する文化

工業界では、バブル崩壊以降、またリーマン・ショック以降、この二十数年間、大手メーカーの下請けに対する値下げ要求が年々厳しくなっている。それに対して下請け側からの苦情・悲鳴がなかったわけではない。しかし、多くの中小零細企業はひたすら値下げ要求に応えるように血の滲むような努力を続けて応えてきた。なぜなら、それをすることが生き残ることだと深く、強く自覚されているからだ。

そういう意味では、近年米価の下落にコメの生産費の低下が連動して見えることは、農業も普通のビジネスになりつつあることを示しているのかもしれない。ただし、地代家賃の低下は農業生産人口の構造の変化に伴うもので、将来も続く傾向とは考えにくい。農業が真に普通のビジネスに脱却するには、生産者自身による自発的で戦略的なコストダウンが継続して行なわれる文化が定着する必要がある。というのも、日本の製造業は一貫してその文化によって存続し成長してきたからだ。


原価計算が経営改善の第一歩

かつては大衆車でも庶民の所得レベルに比べれば高価なものだった。それが年々価格を下げながら性能や安全性を向上させてきたのは、製造業のコストダウン志向の文化によるものだ。彼らは「安かろう悪かろう」とは考えない。製造の効率を良くすることは、単にコストが下がるだけでなく、品質も安定してよくなることだと考えているからだ。これを「カイゼン」と呼ぶ。

製造業の経営者たちは、カイゼンの第一歩は現状がわかるようにすることだという。今、何がいくらで出来ているか、それはどのようにそうなっているのか。そこがわかるから、カイゼンすべき箇所もわかる。

現在の農業界で伸ばしたいのは、この現状分析の力だ。その分析に欠かせないデータの中でも、経営全体の結果が最も凝縮されているものが原価だ。原価を意識するだけでなく、正確な原価計算で数字をつかむことが、農業経営をカイゼンする。

まず読者の原価計算の現状を見て原価計算の意義を解説する。

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