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江刺の稲

よそ者、若者、馬鹿者が地域を再建する

  • 『農業経営者』編集長 農業技術通信社 代表取締役社長 昆吉則
  • 第223回 2014年11月28日

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朝日新聞ですばらしい記事を読んだ。同紙の9月21日付「人口減にっぽん 次世代をつくる」というシリーズ記事「『島留学』、田舎こそ最先端」である。
同レポートは伝える。島根県海士(あま)町は松江市からフェリーで3時間かかる離島(隠岐島)。同町の島根県立隠岐島前(どうぜん)高校は、2008年度には生徒数が89人にまで減少し、統廃合が問題にされていた。しかし、今年度の生徒数は156人へとV字回復している。
廃校は、15歳以上の若者人口の激減を意味する。その危機に島前の3町村長や住民らが立ち上がった。
高校を魅力のあるものにすれば生徒は増えるはず。都会から生徒を受け入れる「島留学」を始めたのだ。この春入学の「留学生」は31人。8月の島での見学会には全国から親子140人が参加した。
「小さいことはよいことだ」と10人前後の少人数習熟度別授業。さらに、「田舎は都会にはない自然や人のつながりがある」と地域に根ざしたカリキュラムをつくる。生徒は船のダイヤ改定案から、島の太陽光発電まで考える。「仕事がないから島に帰れない」ではなく、「仕事をつくりに帰りたい」人を育てようと、課題を解決する力をつける教育を目指した。
10月には2年生がシンガポールに5日間出かけ、シンガポール国立大生に島の課題を英語で発表する。離島での資源リサイクルは……、冬場に観光客に来てもらうには……などのテーマだという。
それだけではない。高校近くの公民館で開かれる公立塾「隠(おき)岐(の)國(くに)学習センター」のゼミにも生徒たちが参加する。センターは、海士町など島前地域3町村が離島の生徒たちに学習の機会を広げようとつくった。156人の島前高校生のうち、110人が通う。この日のテーマは「自分が地域にできること」。海士町を視察に来た熊本県山都(やまと)町の議員ら20人とグループに分かれて話し合った。司会役はセンター長の豊田庄吾さん(40)。リクルートの関連企業を経て、企業や学校の研修を担う会社で講師をしていたのを町がスカウトした。豊田さんだけでない。ソニーを辞めてきた岩本悠さん(34)は、町役場に席を置き、高校の「魅力化コーディネーター」として動く。ジョセフ・クアッシさん(29)はガーナ出身。「都市への人口集中はガーナも同じ。島前地域から学びたい」とやってきた。高校で国際交流を担当する。人が人を呼び、若者が大企業から転身して島に集まってくる。別に大企業出身者である必要などはないのだが、田舎暮らしにあこがれてではなく、自分のしたいことに挑む人々が求めて離島にやってくる。

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