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紀平真理子のオランダ通信

イシグログループ主催のオランダ施設園芸視察研修(2)

視察研修でオランダ中西部のHoek van Hollandにあるパプリカ生産者のVD Holland社を訪問した。ここの施設はもともと別のトマト生産者のものだったが、2013年10月にトマトの値崩れによって倒産したことを受け、同年12月にVD社が施設ごと購入した経緯がある。現在、オランダでは住宅不動産価格の下落と同様、温室の購入価格も下がっているという。
VD社はvan Dijk兄弟による家族経営で、オランダ北部のWervershoof市に10 ha、今回訪問したHoek van Hollandに8haの計18 haの圃場を持つ。同社は、オランダのパプリカ生産者4社が共同で品質コントロールを行なうPapriCoという組織に属している。この組織を通じて世界中にパプリカを出荷しており、日本へは端境期の夏季のみ赤色と黄色のものを輸出しているそうだ。ちなみに、4社の施設面積を合計すると65 haで、うち35 haが赤色、12 haが黄色、そして緑色とオレンジ色が9haずつ生産されているが、VD社では赤色に特化している。
12月に定植し、収穫は年明けの3月から4月に始まって11月まで実施する。冬季は日射不足で生産が難しいため、翌年への準備期間にしている。訪問した8月は上部のパプリカ果実のみ収穫しているのが印象的だった。下部の果実については品質が劣るとともに、作業効率を下げないために収穫しないそうだ。というのは同社では出荷価格が8月でキロ25セント、年平均でも同50セントと、オランダでは野菜の値崩れが起こっている。それでも彼らはこの現状を前向きに捉えており、諦めていない。次のような取り組みを通して状況の打開を図ろうとしている。

(1)地熱エネルギーを同業他社とシェアしてエネルギーコストを削減する。
(2)ポーランド人を雇用し、労働コストを下げる。
(3)高値で売れるマーケットを選定する。

こうして生産コストを下げて利益を追求し、生き残りに全力をかける。その生産コストを下げる方法の一つとして、生産性の向上と効率化のために複合環境制御コンピュータを導入している。同社では、オランダで約40年間使用されて進化を続けているHoogendoorn社(注:オランダでのシェアは30%、日本での総代理店はイシグロ農材(株))のiSiiという複合環境制御盤でハウス内外の計測値や設定値をベースに冷暖房や換気窓、カーテンでの温度調整、かん水を制御し、生産効率を上げている。このシステムでは省エネを意識した制御の設定もできるそうだ。また、労務管理端末のNomadを用い、作業員の作業効率の把握や時給に反映して効率化を図っている。

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