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●機械の調整が不十分
頻度は少ない事例だが、爪の一部や播種機のユニットのセッティングが1条分だけおかしいために、耕起作業や播種するたびに一部だけ十分な作業ができていないケースがある。初期設定時に生じたセッティングミスがそのままになっているなどということも稀にあったりする。
●温度、灌水管理が均一でない
ハウスでの灌水については、以前は均一でなくても気にしないという事例が多かった。最近は減ってきているが、ハウス栽培では灌水が均一でないと、その影響はてきめんに生育状況に反映される。温度についても同様で、デジタル温度計やファンを導入するなどの対策を講じて室温が一定に保たれるようになりつつある。いずれも、ハウスの場合は環境を人間が制御して生産性を上げているので、なるべく均一に保たないと意味がなくなってしまう。
このように播種床づくりから、発芽までを見てきたが、言うまでもなく、いずれも重要なポイントである。前回の排水問題と合わせて、上記の管理が一つでもうまくいかないと、圃場内の揃いは悪くなる。言い換えれば、圃場内の作物を揃えるというのは非常に難しいことなのである。
●環境条件に恵まれていない
一方で、環境条件による圃場内の不均一はある程度仕方がない。特に「日照にバラツキがある」「地下水位が一定でない・湧き水がある」「風の影響を受けやすい」「周辺に大木がある」といった原因は、露地栽培では避けることができない。したがって、自然条件をなるべくうまく利用するほうが賢明である。
ただし、「傾斜地に圃場がある」というのは、これから顕在化してくる問題である。以前から言及しているように、土壌の流失が発生していても、多くの現場では連作障害程度の認識で済ませていることもある。だが、放っておけば状況が悪くなるだけである。気づいた時点で直ちに対策を講じたい。
以上の項目を読んでいただいて、どのような感想をお持ちだろうか。あまりにも細かくてつまらないと思われた方も多いかもしれない。しかし、このあたりの栽培の基本を忘れて、新しい技術を追いかけている方が多いのも事実である。
篤農家に学ぶべきは作物の
出来を揃えるための工夫
かつては、きれいに作業ができていたのに面積を増やしたこと、あるいは本格的に雇用を始めたことなどがきっかけとなってこれまで行なわれてきた作業が、おざなりにされている例が非常に目立っている。
周辺を見渡して見て、いわゆる篤農家と云われている方の圃場というのはきれいに整っていないだろうか。そうでないと標準に比べて収量が取れるはずがないのだ。「日本の栽培現場にはきめ細かい工夫がある」という割には、人によってはこのあたりが雑なのだ。正確な方はとことん正確で、雑な方はとことん雑である。これくらいでいいやと思うか、それぞれのコツを押さえてこだわるのかによる違いだろう。
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岡本信一 オカモトシンイチ
(有)アグゼス
代表取締役社長
1961年生まれ。日本大学文理学部心理学科卒業後、埼玉県、 北海道の農家にて農業研修。派米農業研修生として2年間アメ リカにて農業研修。種苗メーカー勤務後、1995年 農業コンサ ルタントとして独立。 1998年(有)アグセス設立代表取締役。農業 法人、農業関連メーカー、農産物流通企業、商社などの農業生 産のコンサルタントを国内外で行っている。講習会、研修会、現地 生産指導などは多数。無駄を省いたコスト削減を行ないつつ、効率の良い農業生産を目指している。 Blog:「あなたも農業コンサルタントになれる」 http://ameblo.jp/nougyoukonnsaru/
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