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農・業界

イギリス、機能しないガイドラインなら要らない

  • 編集部
  • 2004年09月01日
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イギリス環境・食料・農村地域省(DEFRA)は、4大スーパーマーケットの購買力の濫用を防ぐため、スーパーマーケットと食品の供給者との間に自主的なガイドラインを設け、互いにあるべき関係を求めている。しかし、不満の声はいたる所で聞かれている。公正取引庁の調査では、圧倒的な割合で85%が2002年3月のガイドライン導入後も小売業者の行動は変化していないと答えた。
供給者とスーパーとの間で取り決めたガイドラインの現状

 イギリス環境・食料・農村地域省(DEFRA)は、4大スーパーマーケットの購買力の濫用を防ぐため、スーパーマーケットと食品の供給者との間に自主的なガイドラインを設け、互いにあるべき関係を求めている。しかし、不満の声はいたる所で聞かれている。公正取引庁の調査では、圧倒的な割合で85%が2002年3月のガイドライン導入後も小売業者の行動は変化していないと答えた。

 「ガイドラインには法的強制力がありません。だから効果が出せないのです。私たちはガイドラインの法制化を求めています。農作物を売る際はどんな場合でもガイドラインを適用すべきです」と、ウェールズ農家組合の広報担当、アラン・モリス氏は話す。「酪農産業と牛乳価格の問題を考えてみてください。生産者に支払われる牛乳価格の低さを、小売業者と加工業者はいつもお互いのせいにして、根本的な原因を考えていません。ですから、ガイドラインを立法化して、双方ともそれに従って取引しなければならないようにすべきなのです」とモリス氏は語る。

 「行動を求める農家」代表のデイビッド・ハンドレー氏も同じ考えだ。「ガイドラインを法制化し、強制力を伴わせなければ、それはただの紙切れ同然です。」

 さらに、「ガイドラインは農産物を購入するすべての人に拡大すべきです。農産物を供給する側が抗議すると、取引条件を悪くされたり仕返しを恐れないといけないなんて、全くひどい」と、ハンドレー氏は語る。彼の団体は匿名で不満を訴えたい農家のために活動していくと言う。

 一方、「ファーム」の全国コーディネータのロビン・メイナード氏の場合は、「ガイドラインの対象に他のバイヤーを含めるのは理解できます。しかし、これでスーパーから目を離してしまってはいけません。というのも、スーパーには、サプライチェーンをまとめ上げる力があるからです」と、独立した監督機関の設置と共に、より厳格で法的拘束力のあるガイドラインの必要性を強調する。

 NGOフレンズ・オブ・ジ・アースも、監督機関の設置に賛成だ。「私たちは、ガイドラインの立法化や公正取引庁が設置した機関よりも、より力を持った監視機関の設置を求めています。農家は、自分達の不満を言いに行ける新しい機関ができるのを待っています。不満をまず供給先であるスーパーに訴える現在の仕組みは、機能していません」と、同団体の食料農業キャンペーン担当のサンドラ・ベル氏は話す。

 全国農民同盟(NFU)の食料チェーン部門の責任者テリー・ジョーンズ氏も、ガイドラインは小売業者に限定すべきではないと話す。直接小売業者に納入している農家や農場経営体は、ほんのわずかに過ぎないからだ。「私たちは、個々の場面や、それぞれの業界に応じて妥当性を定める実際的なガイドラインを望んでいます。けれども、一定の価格基準を定めるといった、ガイドラインに込められた『公正取引の促進』という要素も考えていきたいのです」と、ジョーンズ氏は話す。別な団体、「食料と農業パートナーシップ」も、ガイドラインが自主的なものである方が望ましいと考える。立法化されたガイドラインの下ではサプライチェーンの中に柔軟で効率的な協力関係が生まれにくくなるからだ。

 「多くの仕事が信頼の下に進められてこそ、互いに生産的で長期的な関係を築くことができるのです」と、同団体の副代表、スチュアート・トンプソン氏は語る。

 「長期に渡って小売業者と協力関係のある人たちは、『そこに至るまでの道のりは決して楽ではなかった』と言うでしょう。そしてこう続けるはずです。『協力関係がうまく働き出し、小売業者が発展するのと共に自分たちのビジネスも拡大していった』と。こうした関係を築くことができるのも、自主的に実行されるガイドラインがあってこそなのです」と同氏は話す。

 一方、食料飲料製造者連盟では、フードチェーンは複雑に入り組んでいるので、ガイドラインに加工業者や食品業界まで含めることは実際上適当とは考えられないと話す。

 英国小売協会の食品部門責任者のリチャード・アリ氏は、次のように話す。「フードチェーンの鎖をどうやって結び直していくかが問題の本質です。この問題を議論するならば、一つひとつの問題を洗い出し、案件ごとにふさわしい対応を見つけていった方がいいでしょう。誰もが理想的な取引が行われることを望んでいます。しかし、それもガイドラインが自主的に実行されれば実現できるのです」(FW4/9―15週号)

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