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【田牧一郎のカリフォルニア稲作便り】
減反制度が無くなった時、農家はどう動いたか。
- コメ産業コンサルタント 田牧一郎
- 第7回 1997年04月01日
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前回までは、季節の作業を通してカリフォルニアでの稲作を紹介してきました。
今回からは稲作の経営という事を中心におき、関連することあるいは経営に影響を及ぼしている事など、今までとは少し違った視点からカリフォルニアでの稲作を紹介していきます。
今回は、制度としての減反制度が廃止された時、経営者はどう動いたのかを見てみます。
昨年、アメリカ合衆国の農業法が大きく変わりました。
コメの関係で特記することは、従来の減反政策が廃止され、補助金の支払方法が変わったことです。
以前は、政府が提示する減反プログラムに自主的に参加し、減反をしたかわりに生産されたコメに対して最低価格を補償する意味での補助金を受け取ることが出来る制度でした(減反した面積に比例して補助金をもらえるわけではない)。
新しい農業法では、減反制度そのものが廃止され、農地で何を作っても自由になりました。この新政策の下、昨年の夏に生産者と政府との間で1996年~2002年のコメ生産に関する補助金の受給契約が結ばれました。
耕作者やその耕作面積に前年度との変化がなければ、契約のスケジュールに従って今年も補助金の支給が行われます。登録されている過去の反収に表1のように決められた年毎の予定補助金単価を使い、総耕作面積の85%を掛けると農場あたりの受け取り補助金額が算出できます。しかし農場あたりの受け取り上限は年間4万ドルに決められています。
コメを作っても作らなくてもこの補助金は支給されますので、実際はコメ以外の収益性の高い作物を作付けることによって、利益を確保することも可能になりました。
このことによって昨年はコメ作付け面積に変化が見られました。
1996年はコーン・大豆など穀物の価格が高く推移したことや、減反政策の廃止に伴う補助金支給方式の変更から、南部の各州の生産者がコメからコーンなどへの生産作物の変更を行ったと見られます。そのためコメの作付け面積が対前年度9・6%減、12万2千haの減少となりました(表2)。
今年1997年の作付け面積も予測値が発表されましたが、生産者の受取価格や国際相場の値動きからは、作付け面積を増加させるような大きな要因は見あたりません。
1996年に作付け面積が増加したカリフォルニア州でも、作付け面積の9割を占める早生種中粒種の今年の予想価格は低く、昨年以上の作付け意欲は出ないと思われます。
短粒種全体では作付け面積が増加する傾向ですが、秋田小町などの日本の品種の作付けは、1996年産米の販売で各社はかなりの苦戦をしいられており、さらに品質の改善策も急務とあって、大きな作付け面積の増加は考えにくいと思われます。
今回からは稲作の経営という事を中心におき、関連することあるいは経営に影響を及ぼしている事など、今までとは少し違った視点からカリフォルニアでの稲作を紹介していきます。
今回は、制度としての減反制度が廃止された時、経営者はどう動いたのかを見てみます。
新農業法と作付け
昨年、アメリカ合衆国の農業法が大きく変わりました。
コメの関係で特記することは、従来の減反政策が廃止され、補助金の支払方法が変わったことです。
以前は、政府が提示する減反プログラムに自主的に参加し、減反をしたかわりに生産されたコメに対して最低価格を補償する意味での補助金を受け取ることが出来る制度でした(減反した面積に比例して補助金をもらえるわけではない)。
新しい農業法では、減反制度そのものが廃止され、農地で何を作っても自由になりました。この新政策の下、昨年の夏に生産者と政府との間で1996年~2002年のコメ生産に関する補助金の受給契約が結ばれました。
耕作者やその耕作面積に前年度との変化がなければ、契約のスケジュールに従って今年も補助金の支給が行われます。登録されている過去の反収に表1のように決められた年毎の予定補助金単価を使い、総耕作面積の85%を掛けると農場あたりの受け取り補助金額が算出できます。しかし農場あたりの受け取り上限は年間4万ドルに決められています。
コメを作っても作らなくてもこの補助金は支給されますので、実際はコメ以外の収益性の高い作物を作付けることによって、利益を確保することも可能になりました。
このことによって昨年はコメ作付け面積に変化が見られました。
1996年はコーン・大豆など穀物の価格が高く推移したことや、減反政策の廃止に伴う補助金支給方式の変更から、南部の各州の生産者がコメからコーンなどへの生産作物の変更を行ったと見られます。そのためコメの作付け面積が対前年度9・6%減、12万2千haの減少となりました(表2)。
今年1997年の作付け面積も予測値が発表されましたが、生産者の受取価格や国際相場の値動きからは、作付け面積を増加させるような大きな要因は見あたりません。
1996年に作付け面積が増加したカリフォルニア州でも、作付け面積の9割を占める早生種中粒種の今年の予想価格は低く、昨年以上の作付け意欲は出ないと思われます。
短粒種全体では作付け面積が増加する傾向ですが、秋田小町などの日本の品種の作付けは、1996年産米の販売で各社はかなりの苦戦をしいられており、さらに品質の改善策も急務とあって、大きな作付け面積の増加は考えにくいと思われます。
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田牧一郎 タマキイチロウ
コメ産業コンサルタント
1952年福島県生まれ。74年、米カリフォルニア州の国府田農場で1年間実習後、帰国、大規模稲作経営に取り組む。89年、カリフォルニアに渡米、コメ作りを開始する。同時に始めた精米会社で「田牧米」を作り、米国内にとどまらず世界中の良質米市場にブランドを定着させた。現在は、コメを生産しながら、コメ産業コンサルタントとして活躍する。
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