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農業技術進化系

小麦の新品種(2) 世界初の甘い小麦「スイートウィート」 小麦の新たな用途創出の可能性を秘める

(独)農研機構東北農業研究センターと日本製粉(株)は、全く新しい小麦のカテゴリーに入る甘い小麦を開発した。甘味種トウモロコシを総称してスイートコーンと呼ぶのに合わせてこれをスイートウィートと名付けた。これまで麦類には甘味種は存在しなかった。スイートウィートは糖の含有量が圧倒的に多く、通常の小麦との比較でマルトース(麦芽糖)が30倍以上、スクロース(ショ糖)が2.5~5倍と非常に高い(受粉後25日の糖含量)。
 (独)農研機構東北農業研究センターと日本製粉(株)は、全く新しい小麦のカテゴリーに入る甘い小麦を開発した。甘味種トウモロコシを総称してスイートコーンと呼ぶのに合わせてこれをスイートウィートと名付けた。これまで麦類には甘味種は存在しなかった。スイートウィートは糖の含有量が圧倒的に多く、通常の小麦との比較でマルトース(麦芽糖)が30倍以上、スクロース(ショ糖)が2.5~5倍と非常に高い(受粉後25日の糖含量)。

 スイートウィートは「DNAマーカー選抜技術」(2007年7月号89ページに関連記事)の導入により開発された。DNAマーカー選抜では、目的の特性を持った小麦を高精度で簡便に判別可能だ。東北農研ではこれまでにもアミロースを欠いたモチ性小麦や、逆に高アミロースの小麦といった興味深い特性を持った系統を簡便に選抜できるDNAマーカーを開発している。

 前述のモチ小麦を母に、高アミロース小麦を父として交配してできたのが、この甘い小麦だ。スイートウィートから作った小麦粉を用いれば、パンやケーキなどに独特の風味を加味できる。マルトースは砂糖とは質の違う甘さを与えるが、比較的高価な糖である。スイートウィートにはあらかじめマルトースがふんだんに含まれており、その利用価値は高いと考えられる。 なぜ糖の蓄積が大幅に高まるのか、そのメカニズムは興味深いものであり、現在その解明も進行中である。また、東北農研ではスイートウィート以外にもDNAマーカー選抜によりその兄弟系統を多数得ており、それらの中からも新たな加工適性を持った有望な系統が得られるものと考えられる。

 今回得られたスィートウィートはまだ実験系統段階であり、普及のためには耐病性や栽培適性、小麦粉で重要となるグルテンの質や含有量などについて改良を行なっていく必要がある。引き続き、東北農研と共同で育成を進めていく予定だ。 スイートウィートは、小麦粉の枠を超え、従来とは異なった形態での新しい用途も創出できるのではないかと期待している。現在その利用法について、いろいろと模索しているところである。
(文責 新畑智也)

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