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農業経営者ルポ

俺は賃耕屋だ!!

  • 『農業経営者』編集長 農業技術通信社 代表取締役社長 昆吉則
  • 第27回 1998年02月01日

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高柳民雄さん(51歳)と初めて会ったたのは、本誌の土壌セミナーの席だった。その時に経営概要を聞いた高柳さんの返事が印象に残っている。「俺は賃耕屋だよ!」
 高柳民雄さん(51歳)と初めて会ったたのは、本誌の土壌セミナーの席だった。その時に経営概要を聞いた高柳さんの返事が印象に残っている。

 「俺は賃耕屋だよ!」

 茨城弁で大声の「賃耕屋!」という言葉に、高柳さんの自嘲や照れのようなものを感じたからだ。しかし、そんな高柳さんが投げかける肥料や施肥についての実践的な問いは、一般の野菜作農家のレベルをはるかに越えていた。

 ある年齢以上の農家の会話を聞いて感じることがある。その言葉の端々に表れる「土を離れた者」に対する軽蔑とも妬みともとれる屈折した感情の存在である。とりわけ農家が農家相手の仕事を始めることに対しては、自分に利益のあることでも、ことさらに屈折した感情が表れる。

 農家の人々が「賃耕屋」という言葉を使う時に、そんなニュアンスを感じる。

 「それでも平成3年までは1、2頭だけど酪農をやっていたんだ。でも俺は怠け者だから止めた」

 と話す高柳さん自身、そんな屈折した感情が残っている世代なのかもしれない。しかし、話を聞く内に、高柳さんの言葉には、時代を切り開いてきた誠実な職業人ゆえの葛藤が込められていることに気付いた。

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