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土壌別経営診断うちの土ではどう作る?

高木健一さん(岐阜県海津郡)の場合

「未来はあるが明日はない、夢はあるが金がない」ということを感じております。将来はこうなるという姿はなんとなくみえるのですが、そのための明日という日を考えてみるとあまりよくみえない。農業に可能性を感じてはいるが、そのために投資するお金をどうするか。そこがこれからの課題です。


圃場・改善のポイント/土のしくみ・はたらきを知る
水田転作


水田転作導入の難易度

 以前からかなり繰り返し言われていたことですが、米の市場が予想以上の過飽和をしてしまったことから、減反も中途半端なことではなく、これを乗り越えられないと、水田を相手とした農業は不利だということがようやく多くの人の中で自覚として変化してきていると思います。

 付き合いの減反から積極策としての減反、この課題を追求することがマイナスからプラスの発想に転換できることは誰でも理解できますが、現場での実際の困難さはどんな点にあるのかということが今回のテーマです。

 様々な書物や文献を読むと、水田は湛水しやすい条件になっているために、畑地作物を栽培しようとすると過剰水分により湿害をおこしてしまい畑地転換には困難を伴うという事項ばかりが目について気持ちが沈んでしまうのですが、これを越えようとする人には課題の一つ一つが見えてくるはずです。

 そこで転作導入の難易度を一応五段階に分けて、それぞれについてその土壌の特徴を述べてみたいと思います。

(1)水稲作をしているが現状のままでも畑地転作が容易なもの
 ・中粗粒灰色低地土灰褐系……砂土~壌土
 ・中粗粒褐色低地土……砂土~壌土

 前者の灰色低地土は河川下流域の自然堤防跡地や砂丘地跡の排水良好な水田にみられることが多く、今回の現場もこの一種に該当するものです。

 また褐色低地土は河川上流の沖積地や崩積地でみられるもので土性も粗で、排水良好な場合が多いです。

 この2種類の土壌は手触りもサラッとしているのですが、腐植も多く含まず、保肥力も弱くて一見頼りない土壌に思いますが、これが逆に転作での水分過剰に対して良いのです。というのは、同じ水分過剰であっても、その土壌中の水に含まれる酸素がある程度存在すれば転換作物は生育できるのです。

 砂質系の土壌は、その中の水分が移動しやすく、水が動くことでこの酸欠から根を守ることが可能なのです。

 ただしこれは圃場における縦浸透や圃場と外部との水の移動がある場合です。ただ単に水が停滞すればやはり湿害は他の土壌と同様におきます。

(2)軽度の改良手段により導入が容易であること、また、集団化して対策すれば可能な対象
 ・細粒褐色低地土……埴壌土~埴土
 ・細粒灰色低地土、灰褐系……埴壌土~埴土

 前者は黄褐色土壌の粘土系であり、丘陵寄りに分布し、黒ボクの混じっているものもあります。

後者は沖積平坦地でグライ層がなく酸化的土壌であっても粘性は強いものです。

・礫質褐色低地土
・礫質灰色低地土

 この両者は、河川沖積地に分布し、砂礫層が30cm以下から出るもので、透水性は極めて良く、グライ層は含みません。

 礫質褐色低地土は黄褐色系で酸化的なもので、礫質灰色低地土は灰褐色系でやや酸化的なものということになります。

・礫質土壌(30cm以内より砂礫層)

 これは礫質土壌に比べて、砂礫層がより浅いところから出るものです。

 河川沖積地に分布し、著しい漏水田であるということになっていますが、現在の水稲作業体系では、浅い有効土層ではあるが良質食味米を生産できる水田となっています。

 排水性良好なため水田転作には最も適しています。ただし土層が浅いため根菜類にはむいていません。保肥力が低いが全く問題はありfません。

・中粗粒灰色低地土、灰色系……砂土~壌土

 これは灰色低地土の中でも酸化状態のあまりすすんでいないもので、グライ層が70cm以上にあるものということですが、砂質土が多く、下層にグライ層を含む割には転作田にむいているタイプということです。

・腐植質黒ボクグライ土(10度以下の傾斜地形)
・腐植質黒ボクグライ土(圃場整備、排水路完備)

 この両者は同じタイプの土壌ですが、人工的に地形を改変したものです。

 火山灰土水田で黒ボク層の厚いものであり、山麓や河岸段丘上に分布するものです。

 以上が土壌分類したときに転作水田としての可能性が高い、あるいはコスト的に水田転換を実施しやすいタイプといえます。

(3)これより改良手段を要する土壌タイプは、黒ボクグライ土、細粒灰色低地土、中粗粒グライ土、黒泥土(排水完備)泥炭土(排水完備、50cm以内泥炭)ということになります。

 この中に細粒灰色低地土がありますが、これは土性が埴壌土~埴土のもので、透水性が不良で、半湿田のところが多いものです。

(4)次に水田転作には不向きなタイプ、あるいは相当の排水対策を必要とするものは、泥炭質土壌、中粗粒強グライ土、などがあります。

(5)全く不向きなものには、細粒強グライ土があります。

 以上(1)~(5)までが転作導入の難易により大きく分類した土壌タイプです。

 今回の取材は、この難しい課題、水田転作を経営戦略として積極的に取り入れていくために何をしたらよいかということでしたが、それは当然、水田を畑地化しにくい圃場を相手にしても仕方ありませんので、その見分け方を必要とすると考えます。

 この調査現場では、中粗粒灰色低地土で転作に向いている土壌であり、その土性も砂土あるいは砂壌土ということで野菜作に適したものといえます。

 4haの圃場で麦の初期生育に部分的に異変が生じて、その原因と対策はということでしたが、麦の葉の半分程が緑色から赤紫色に変化していたことと、その下葉が一部枯れてしまっている状態でした。

 全圃場でなく、部分的なのですが、それが表面水の溜まっている場所もあればそうでない場所もあり、また地下部を掘り取ってみても根に異常は認められず、湿害というものでもありませんでした。

 その水の滞水しているところの土壌も、昨年の秋にスキ込まれたワラの異常還元を示す異臭もなく、過湿害というようではありませんでした。

 病害の様子もないので生理障害の一種と思われますが今の段階では原因不明です。

 根も茎も健全で葉の一部だけが赤紫色に変化している、つまりアントシアンの色素を帯びているということなので、今後問題なく生長していくと考えられます。

 麦の初期生育において葉が赤くなってしまったがどうしたことかという最初の問いかけでしたが、このように作物体に気になる変化が発生した場合、病虫害ととらえるか、あるいは栄養障害ととらえるかが一つのポイントとなるので、このときの一般的見方を述べておきます。

 まず葉の葉脈に沿って変化が現れているようであれば栄養障害とみてよく、葉脈と無関係に変化が出ていれば病害、あるいは虫害と考えて下さい。

 また、葉以外では生長点付近が変化していれば栄養障害とみて良いでしょう。

 ただしこれは一般的なものなので、実際には両者が存在することも多いわけですし、各作物ごとの代表的な栄養障害や病害は頭に入れておくべきであり、この類の写真や資料は公的指導機関や書店の農業書を探せば入手できるはずです。

 ここでまた話を湿害に戻しますが、湿害は土壌水分の測定、あるいは土壌中の気相率を求めるだけでは説明のつかないケースが多くあります。

 水が過剰にあってもそれが縦なり横方向に移動していれば違いますし、またその水に溶け込んでいる酸素量にも影響されますし、その土壌中の分解しやすい有機質の存在も土壌還元を強くして根に障害をおこしますので考えなくてはいけません。

 これはこの圃場で水田転作の課題でもあり、追跡調査をしていく必要があります。

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