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【今年の市場相場を読む】
定番という意識から認識不足の軟弱野菜を見直す ホウレンソウ・ニラ・ワケギ・サニーレタス
- (株)農経企画情報センター 代表取締役 小林 彰一
- 第23回 1998年02月01日
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ホウレンソウ 冬場に減って夏場に増える 商品性を冬夏で明確に分ける
【概況】
東京市場のホウレンソウは、この数年来非常に特徴的な動きを見せている。まず、年間の入荷レベルでは減少傾向だということ。平成4年と8年の五年間対比でいうと、入荷数量は16%も減った。ところが、これに対して、平均単価は平成6年に460円/kgを突破したものの、ほぼ430円前後で安定している。一方、産地構成としては、群馬、埼玉がほぼ周年出荷体制であるのに対して、東北、北海道などの高冷地が夏ホウレンソウを受け持つ季節産地、という布陣である。年間数量ベースでいうと、ホウレンソウはピーマンやカブと同等の位置にある。ピーマンやカブが、ホウレンソウに迫ってきた、というよりは、ホウレンソウの数量が減っている、という方が実情に近い。
【背景】
過去数年、数量が減少傾向にあって単価はほぼ横ばいという数字だけみると消費の減少を入荷でコントロールして単価を維持している、という構造に見えがち。しかし、実態は違う。数量の減少自体は、市場外流通の影響もある。また、グラフで明確にわかるように、単価の安い冬場中心の出荷が減少し、単価の高い夏ホウレンソウが増えているということである。平成4~7年の平均値と平成8年を比べると、過去平均では最盛期の2月と入荷の最も少ない8月とではほぼ3分の1。これが、8年になると、2月が34%も減って、8月が2%の伸び。比率は2分の1までに差が縮小している。このため冬場の単価は上がり、夏ホウレンソウの単価は下がった。
【今年の対応】
農家の立場からいったら、単価の安い冬場に数量を減らして単価を上げること、一方で単価の高い夏ホウレンソウの割合を高くする、という考え方は当然だといえる。だから、この流通状況は明らかに農家側が誘導したものである。しかしながら、これを消費者の立場から見たらどうなるだろう。旬の安くておいしい冬場のホウレンソウが減り気味で高くなり、高くておいしくない夏ホウレンソウが増えている、ということである。この傾向ははっきり言って危険である。消費者のホウレンソウ離れを誘導していかないか、と危惧される。夏ホウレンソウと冬のホウレンソウは、まったく違う野菜である。冬場のホウレンソウをもっと食べさせたい。
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小林 彰一 コバヤシショウイチ
(株)農経企画情報センター
代表取締役
青果物など農産物流通専門のジャーナリスト。(株)農経企画情報センター代表取締役。「農経マーケティング・システムズ」を主宰、オピニオン情報紙『新感性』を発行。著書に、『ドキュメント青果物市場』、『日本を襲う外国青果物』、『レポート青果物の市場外流通』、『野菜のおいしさランキング』などがあるほか、生産、流通関係紙誌での執筆多数。
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