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それで懲りる長友さんではなかった。相談と称しては度々役所を訪ねる。同時に「もぐり」で農業を続け、農家としての実績を作っていった。やがて役所内でも、長友さんは農業オタクの変なヤツということで評判になっていった。そんな頃、高校の同期生が役所の農林課に転任してきた。転機はそこで訪れた。その人が変り者の同期生に共感を持ってくれたのだ。関係各部署や農業委員の間を回ってくれたのだ。
「地域の農業が崩壊しかかっている時、これほどまで農業をやりたいという人物がいることは有難いことではないか」と。
農地を借りるのは別に難しいことではなかった。でも、長友さんが「農家」であることにこだわったのは、都会地であればこそ、そして現代の社会であればこそ「農業」や「農家」が存在することの価値や意味を示したいと考えたからだ。
こうして脱サラ3年目にして長友さんは晴れて農家の仲間入りをした。当時も今も農地は全て借地である。
稲の他に少しずつ無農薬の野菜作りも始めた。試行錯誤の積み重ねだったが、少しずつお客さんに売れるような野菜も作れるようになってきた。
ちょうどその頃、東京の高級住宅地・成城に有機野菜や高品質の野菜を取り扱うスーパーができた。かつてビバリーヒルズで見たものが東京にもできたのだ。
以来、長友さんはその店を注目し続けた。オーナーそして売場を取りしきる専務さんの考え方や経営観、店や店員の様子を観察し、また直接オーナーに会って話しも聞き、人からも取材を続けた。品揃え、店のディスプレイを含めて、そこはまさにかつて考えていたお店そのものだった。売られる野菜も最高級品だった。
さらに数年を経て、野菜作りにも自信ができた。お客さんの評価も得られるようになった。そして、その高級品スーパーが畑に近い横浜市青葉台に出店してきたのだ。
チャンスだと思った。長友さんはそのスーパーの高品質野菜の棚に自分の野菜を並べて貰うことを申し入れた。長友さんの無農薬野菜は評価を受けた。取引を通して、それまでに気付かなかったこともたくさん教えられた。
スーパーとの取引を始めると同時に長友さんは自分の野菜の直売を止めた。すでに直売のためにかかる手間も限界にきていた。お客さんたちも長友さんに協力を惜しまなかった。長友さんが出荷する日に合せて買物をしてくれるのだ。長友さんはそのスーパーに野菜だけでなくお客さんも連れていったのだ。
「地域の農業が崩壊しかかっている時、これほどまで農業をやりたいという人物がいることは有難いことではないか」と。
農地を借りるのは別に難しいことではなかった。でも、長友さんが「農家」であることにこだわったのは、都会地であればこそ、そして現代の社会であればこそ「農業」や「農家」が存在することの価値や意味を示したいと考えたからだ。
こうして脱サラ3年目にして長友さんは晴れて農家の仲間入りをした。当時も今も農地は全て借地である。
マーケティングセンス
稲の他に少しずつ無農薬の野菜作りも始めた。試行錯誤の積み重ねだったが、少しずつお客さんに売れるような野菜も作れるようになってきた。
ちょうどその頃、東京の高級住宅地・成城に有機野菜や高品質の野菜を取り扱うスーパーができた。かつてビバリーヒルズで見たものが東京にもできたのだ。
以来、長友さんはその店を注目し続けた。オーナーそして売場を取りしきる専務さんの考え方や経営観、店や店員の様子を観察し、また直接オーナーに会って話しも聞き、人からも取材を続けた。品揃え、店のディスプレイを含めて、そこはまさにかつて考えていたお店そのものだった。売られる野菜も最高級品だった。
さらに数年を経て、野菜作りにも自信ができた。お客さんの評価も得られるようになった。そして、その高級品スーパーが畑に近い横浜市青葉台に出店してきたのだ。
チャンスだと思った。長友さんはそのスーパーの高品質野菜の棚に自分の野菜を並べて貰うことを申し入れた。長友さんの無農薬野菜は評価を受けた。取引を通して、それまでに気付かなかったこともたくさん教えられた。
スーパーとの取引を始めると同時に長友さんは自分の野菜の直売を止めた。すでに直売のためにかかる手間も限界にきていた。お客さんたちも長友さんに協力を惜しまなかった。長友さんが出荷する日に合せて買物をしてくれるのだ。長友さんはそのスーパーに野菜だけでなくお客さんも連れていったのだ。
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昆吉則 コンキチノリ
『農業経営者』編集長
農業技術通信社 代表取締役社長
1949年神奈川県生まれ。1984年農業全般をテーマとする編集プロダクション「農業技術通信社」を創業。1993年『農業経営者』創刊。「農業は食べる人のためにある」という理念のもと、農産物のエンドユーザー=消費者のためになる農業技術・商品・経営の情報を発信している。2006年より内閣府規制改革会議農業専門委員。
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