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【女だからの経営論】
設ける農業でなく太る農業に
- 三好かやの
- 第16回 1998年04月01日
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4年がかりで自宅を建てる
「士別は、どの家の玄関にも絶対ドライフラワーが飾ってあるからびっくりしたよ―冬の間、宅配便のアルバイトをしていた友人が、そう教えてくれました」と、五十嵐紀子さん(43歳)。ここ数年、女性たちの間でリースやドライフラワーの需要が高まっているとはいえ「どの家にも、必ず」とは、ものすごい普及率である。その仕掛け人が、実はこの紀子さんなのだ。
「まあ私たちが作って販売したもの、それから講習会に来てくれた生徒さんたちがのべ400人くらいいるから、その作品もあるだろうし、またその方たちに教わって作った人もいるし……」
かく言う五十嵐さんの自宅の玄関先には、色とりどりのドライフラワーが無数に吊り下げられている。これが商品の材料であり、講習の教材にもなる。
「ここで乾かすのが一番いいんですよ」 なるほど。冬の農閑期の手仕事に、ドライフラワーを使ったリース作りはもってこいの仕事だ。さすが、女性の感性を生かした手工芸品だな、と思いきや……
「実はこの家も私たちが自分で建てたんです。基礎に1年、ブロックを積み上げるのに1年、屋根をかけるのに1年、内装に1年、全部で4年かかりました。壁や天井も私が塗ったのよ」
それじゃ一体、家が完成するまでは、どこに住んでいたんだろう?
「ダンナが建てた牛舎に住んでました。子どもたちも。長男の直人と長女の恵はそこで育ったの」
ええっ! びっくりである。
儲ける農業でなく太る農業に
仙台市出身の紀子さんは、「花屋さんになりたい」という思いから、高校卒業後、園芸や花卉栽培を学べる神奈川県の恵泉女学園に進学。1年生の夏休みに酪農実習のために初めて酪農学園大学を訪れ、北海道の虜となる。
「山は遠いし、大地はまっすぐ平らだしどの家にも煙突があってトタンの三角屋根。ここは日本じゃない思った」
それから休みのたびに訪れるようになったが、次第に将来の夢が「花屋さん」に収まり切らなくなってた。
とはいっても、実家はサラリーマン家庭。就農できるあてもなかった。それでも北海道への思いは立ちがたく、知人の勧めで南西部の瀬棚町で酪農実習をすることになる。
ちょうどその時、以前その農場で実習してた青年が、カナダでの酪農実習から帰国し、将来の農業に対する思いを、熱く語っていた。
「僕は昔ながらの家族主体の農業がしたい。家に牛や家畜がいて、自給自足で作れるものはとことん手作りで」
この時、紀子さんは「あれ、この人が語っているのは、そのまま私の夢だわ」と思ったという。それが広司さんだった。
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