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ところが、補てんの基準となる入札価格が実勢価格とかけ離れている。農協が、立場の弱い卸業者に高値入札を働きかけたりしているとされ、入札価格は「実勢価格よりも一~二割は高い」(検討会関係者)といわれてきた。こうした点が一気に改められる。
新聞解説から三つのポイントが読みとれる。一つは、減反との絡みである。二つは、全農や経済連とコメ卸業者との不透明取引きが是正されること。三つは、実勢価格に基づく所得補償が可能となること。簡単にチェックしておこう。
まず減反との絡み。一〇年産から大幅減反の方針が示されたが、現行の自主流通米の値決めでは値幅制限があるので、結果として下支えされることになる。つまりは実勢以上の米価になってしまうのだ。そうなれば兼業農家などで「コメ作りやめた」という人が出てこない。
もし値幅制限がなくなればどうなるか。昨今のような大量のコメ余りの時には、米価はズルズルと下がっていく。コストが合わないコメ農家は脱落していく。米価が下がれば農家の数が減って減反効果が期待できる、それを食糧庁は狙っているようだ。
これには問題が二つある。一つは、経済原則通りにメ農家が、米価に反応してくれるかだ。筆者の考えは違う。コメ農家の大半は、農地価格に反応しても、コメの価格には反応しない。大半のコメ農家を見渡してみるがよい。例えば新潟のコメ兼業農家は、米価が一万五〇〇〇円を切ろうが、あるいは一万円になろうが、彼らは絶対にコメ作りをやめない。それは農地を守るためにやめないんだ。
ならば本来の減反策は何か。農地価格を下げることではないか。農家が農地にしがみつくのをやめさせる政策が必要なのだ。農地価格はドンドン下がりますよ。そうなると農家はどう反応するだろうか。値下がりを見越して農地を処分する方向に動くだろう。
その際のポイントは、やる気のない兼業農家にコメ作りをやめてもらって、その余った農地をやる気のある専業農家に引き継いでもらうことだ。それで農地取得の意思があって資金難の専業農家は、一定の条件の下、国が長期の超低利資金を貸してやること。これが究極の減反解決策ではないか。
今回の値幅制限で専業農家にとって心配すべき点がある。価格の下値支えがなくなるので、米価急落が一気になる恐れがある。そうなれば専業農家層は大打撃を被る。これが一番の心配だ。
米価を実勢価格に近づけるのに値幅制限を外すことは、別に悪いことではないが、それで専業農家層に打撃を与えてはいけない。食糧庁は、今回の値幅制限撤廃で予想されるマイナス影響を極力排除しなければならない。それには専業農家を育てる方策をセットで打ち出すべきではないか。
新聞解説から三つのポイントが読みとれる。一つは、減反との絡みである。二つは、全農や経済連とコメ卸業者との不透明取引きが是正されること。三つは、実勢価格に基づく所得補償が可能となること。簡単にチェックしておこう。
制限撤廃は専業農家が困るだけ
まず減反との絡み。一〇年産から大幅減反の方針が示されたが、現行の自主流通米の値決めでは値幅制限があるので、結果として下支えされることになる。つまりは実勢以上の米価になってしまうのだ。そうなれば兼業農家などで「コメ作りやめた」という人が出てこない。
もし値幅制限がなくなればどうなるか。昨今のような大量のコメ余りの時には、米価はズルズルと下がっていく。コストが合わないコメ農家は脱落していく。米価が下がれば農家の数が減って減反効果が期待できる、それを食糧庁は狙っているようだ。
これには問題が二つある。一つは、経済原則通りにメ農家が、米価に反応してくれるかだ。筆者の考えは違う。コメ農家の大半は、農地価格に反応しても、コメの価格には反応しない。大半のコメ農家を見渡してみるがよい。例えば新潟のコメ兼業農家は、米価が一万五〇〇〇円を切ろうが、あるいは一万円になろうが、彼らは絶対にコメ作りをやめない。それは農地を守るためにやめないんだ。
ならば本来の減反策は何か。農地価格を下げることではないか。農家が農地にしがみつくのをやめさせる政策が必要なのだ。農地価格はドンドン下がりますよ。そうなると農家はどう反応するだろうか。値下がりを見越して農地を処分する方向に動くだろう。
その際のポイントは、やる気のない兼業農家にコメ作りをやめてもらって、その余った農地をやる気のある専業農家に引き継いでもらうことだ。それで農地取得の意思があって資金難の専業農家は、一定の条件の下、国が長期の超低利資金を貸してやること。これが究極の減反解決策ではないか。
今回の値幅制限で専業農家にとって心配すべき点がある。価格の下値支えがなくなるので、米価急落が一気になる恐れがある。そうなれば専業農家層は大打撃を被る。これが一番の心配だ。
米価を実勢価格に近づけるのに値幅制限を外すことは、別に悪いことではないが、それで専業農家層に打撃を与えてはいけない。食糧庁は、今回の値幅制限撤廃で予想されるマイナス影響を極力排除しなければならない。それには専業農家を育てる方策をセットで打ち出すべきではないか。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
「コメの値幅制限撤廃」報道を追う!
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