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【女だからの経営論】
うちらみんなのおばあちゃん
- 三好かやの
- 第18回 1998年07月01日
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うちらみんなのおばあちゃん
「おかえり」
神戸市西区に設立された、「神出オーガニックコテージ・グランメール」。ここに一歩足を踏み入れると、まず目に入る木の看板に掲げられた、この言葉が訪れる人を出迎えてくれる。初めて来たのに「おかえり」。それでもなんだか懐かしい空気が漂っている。「グランメールいうのは、フランス語で『おふくろさん』の意味。でもみんな『おばあちゃん』って言ってるけどな(笑)」
と、このコテージを運営する女性生産者グループ(有)ヘルシー・ママ・SUN社長の西馬きむ子さん(52歳)。
西馬さんらが農業を営む神戸市西区神出町は、神戸市内の中でも、地域振興のために、市が農業地に指定した地域。近郊農業の拠点として、水田や畑が残っている。
約30年前に、故郷の農村を離れて都会に出てきた世代の子どもたちが、家庭を作る時代に入り、親も子も都会育ちで、まったく「田舎」や「農村」を知らない。「田舎のおばあちゃん」のいない子どもたちが増えている。
「そんなら私らがみんなのおばあちゃんになりましょう。ここは実家だと思ってもらえばいい。そやから『おかえり』なんや」
元々ヘルシー・ママ・SUNは、神戸市内の消費者グループに、無農薬・無化学肥料の有機野菜を販売するなど、積極的に交流を深めてきた。消費者との交流会は、その都度農協の倉庫などを借りて行ってきたが、かねがね独自の活動拠点がほしいと願っていた。
そんな折、神戸市の神出町が「人と自然の共生ゾーン」に指定され、宿泊施設建設の話が持ち上がるが、95年突如として起きた、阪神・淡路大震災のため事業は頓挫してしまう。その後再度この話が持ち上がったが、市からの予算はカットされてしまい、国の補助と足りない分は、近代化資金を借り受けて、総工費8200万円をかけて、昨年7月、念願の「グランメール」が完成した。
ここでは、一般、趣味、就農、の3コースに別れて、市民が施設の周囲の畑で実習を体験し、宿泊できる。技術指導には「ママ・SUN」のメンバーが当たり、食事は自炊となる。就農のコースには、各地からの研修生や将来的に農業を志す若者たちが所属していて、取材当日もタマネギ畑の草取りに汗を流していた。
「いやあ、今日はエラいしんどかったわ、お母ちゃん」
「あんなもんで、しんどい言うてるようでは、まだまだやなあ」
そんな彼らと仕事の後にビールを酌み交わす。それもまたお母ちゃん(西馬さん)の大いなる楽しみなのである。
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