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女だからの経営論

うちらみんなのおばあちゃん

 一口に「自然」といっても、ほったらかしておけば元に戻るというものではない。一度人間が手をかけてしまった以上、バランスのいい状態に戻すには、壊した以上の手間隙が必要だ。この他にも、一番微生物が多く繁殖する土の表面に肥料を置く、表層施肥や、ハウスにはすべて暗渠を入れるなど、西馬農法には「話すだけでも3~4日はかかる」ほどの内容が盛り込まれている。


安定した経営の成り立つ「有機」


 そうしてなんとか土の力を回復し、化学肥料や農薬を使わない栽培が可能になっても、「経営」が成り立たないのでは話にならない。そもそも西馬夫妻が有機栽培に目覚めたのも、このまま化学肥料と農薬を使っていたのでは「自分の生業(なりわい)とする農業ができなくなってしまう」という危機感があったからだ。

 もうひとつ正さんが目指したのは、常に安定した収入を得られる「サラリーマン的な」農業だった。二人が新しい農法と格闘していた時期、大手百貨店の大丸が、

「農家の人は、売り物には農薬使ってるのに、自分が食べる分には使わへんと聞いた。そういう安全なものだけをを作ってる農家はないか」と中央市場へ打診してきた。「それなら、西馬さんがやってる」と、いうことで商談が成立。連日コーナーを設けて計画的に出荷するようになった。

 その試みがすこぶる好評で、他の店舗でも扱いたいということに。それではとても量が足りないので、近隣の仲間に呼びかけてグループで出荷することになる。そうして「神出有機栽培グループ」を設立。栽培方法を互いに教え合い、協力しながら現在では関西圏の大丸21店舗に出荷するまでとなる。

 一戸の農家ではとても捌ききれない量だが、仲間を作ることでパワーアップできた。

 農家が消費者と直につながって、野菜を販売したとしても、販売経路はなかなか広がらない。

「農協と、中央市場と、仲買さんを通じて大丸に買ってもらって、余った分は他のスーパーへ。そういう経営がしっかりできないと。農家が農業で食べていかなければ、経営とはいえない」

 単作の大産地と違い、西馬さんたちは、毎日少しずつ種を蒔き、できた分を日々出荷するという体制。それも多品種栽培で、土をぐるぐる回す農法だから、メンバー全員が同じように「ぐるぐる」と栽培して出荷していけば、自ずと売り場には、バラエティ豊かな作物が並ぶシステム。

「うまいやり方やろ」       

 と、きむ子さん。全くである。

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