ナビゲーションを飛ばす



記事閲覧

  • このエントリーをはてなブックマークに追加はてな
  • mixiチェック

女だからの経営論

うちらみんなのおばあちゃん

お母ちゃんにしかできないこと


 さて、きむ子さんの「モヤモヤ」はその後どうなったかというと…… 知り合いに、子どもがアトピーで悩んでいるお母さんがいた。近所で売っている野菜はとても食べさせられない。きむ子さんは、そんな彼女の車のトランクいっぱいに野菜を詰めて見送っていたという。

 食べきれない野菜を近所に配ったところ、「とにかくおいしくて、しかも安心や」という評判が立ち、定期的にグループで購入したいという人たちが現れた。それではとても西馬さんの畑だけでは賄いきれない。それを正さんに相談すると、

「神出有機栽培グループのお母ちゃん同士でグループを作ればいい」

 とアドバイスしてくれた。こうして誕生したのが「ヘルシー・ママ・SUN」である。しっかりした経営基盤となる「ハード面」の農業を支えるのがお父ちゃんたちなら、消費者とより密接な関係を保ち、生産者の思いや農業の魅力を伝える「ソフト面」を担うのはお母ちゃんの役目。きむ子さんはここに「モヤモヤ」の捌け口を見いだした。

「これまで生産者と消費者の交流といえば、男性対女性のつながりだった。お父ちゃんたちは野菜を『商品』としてしかものが言えない。自分は経営しているから、自分の商品を買ってほしいという思いで交流する。でも、それがお母ちゃんになって、女性が女性と話し合うということは、同じ野菜が家族を守り育てる『食料』になる。女同士がつながることで、農業の見方が変わって来る。そうして自分の持ち場、持ち場で能力を発揮していくのが、私はパートナーやと思っている」

「ヘルシー・ママ・SUN」が誕生したことで、きむ子さん同様それまで燻っていた思いを発散させる場を見いだしたメンバーも少なくない。「グランメール」設立に当たり、一人30万円ずつ出資し、有限会社を設立。責任もやり甲斐もみんな一緒だ。

 あの震災の時は、被災地の消費者に向けて「いつもは30分のところ、6時間かけて」野菜や水、コンロなどを積み、救援物資を運び込んだ。そんな「心の救援」ができるのも「ママ・SUN」ならでは。この時、都市の近くで農地を守っていくことの大切さを実感したという。

 現在は、グランメールの設立1周年のイベントに向けて張り切っている。「都会の暮らしに疲れた人が、ふらっとグランメールへやってきて、部屋でゴロンと休んでる。私が畑から上がってきたら『あらー、来とったのー』。ここがみんなのそんな場所になればいい」

 きむ子さん個人のパワーもさることながら、「ママ・SUN」たちが集ったことで、可能性はますます広がった。頼もしい「お母ちゃん」たちがいつも賑やかに寄り合いしている「グランメール」から、今後新しい展開がどんどん生まれていくに違いない。


西馬きむ子さん
(有)ヘルシー・ママ・SUN(兵庫県・神戸市西区)
〒651-2334 神戸市西区神出町柴合74-5
TEL.078-965-2456 FAX.0078-965-2460

Profile
にしま きむこ 1945年神戸市生まれ。農協在職中に、正さんと知り合い結婚。その後義父亘さんと共に農業を営む。82年、正さんが農協を退職し、専業農家に。本格的な無化学肥料・無農薬野菜の栽培を開始。地元の生産者と共に「神出有機栽培グループ」を結成。91年その女性会員11人の集まり、「ヘルシー・ママ・SUN」を結成。近隣の消費者と積極的に交流を続ける。そして、97年7月農作業を体験できる会員制宿泊施設「神出オーガニックコテージ・グランメール」を設立・消費者との交流や活動拠点として、新たな活動を展開している。水田45a、施設60a、採卵用鶏300羽。家族経営の(有)ヘルシーファーム専務(夫が社長)。(有)ヘルシー・ママ・SUN社長(夫は支配人)。

関連記事

powered by weblio