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また、収穫時には父親に3条のコンバインであらかじめ水田の外周だけを刈ってもらう。その後、残った中心部を高木が6条のコンバインで刈っていく。そうすることで枕地刈りの面積を減らし、1日あたりの作業負担面積を増やすことが可能になる。
山の機械と同様、水田の機械もほとんどが中古機だ。機械のメンテナンス能力が高いだけでなく、鉄骨倉庫やプレハブ冷蔵庫なども、部材を買ってきて自分で建てた。自ら設計施工するだけに、使い勝手を考えた工夫が設備の随所に見受けられる。フォークリフト用のパレットも、売れない木材を使って自作したものだ。そんな高木のところには、機械商も出物の中古機や新古機の情報を持ってくる。
少ない手間で仕事をこなすため、所有する機械の数は決して少なくない。にもかかわらず、「借金も今年には完済してしまうので、融資の実績を残しておくために今年は何かを買おうと思っている」と笑うほど、高木の償却費は少ない。
すべての水田に電気柵を立てるなど、その手間はほかの地域と比較しても多くなるはずだ。しかし、高木はこう言う。
「人は自分の手間の多さを理由に生産コストがかかるというけど、獣の被害は急に増えたわけではなく、昔からあったわけです。電気柵を張るのが手間だというけど、それをしなければ収穫が皆無になってしまいます。だからここでコメ作りをする限り、どうしても必要な作業なのです。でも、そのために夜も寝ずに仕事をしているわけではありません。労働コストを考えるのは当然ですが、それを見合わないと考えるのは、働かされている者の考え方ではないでしょうか」
高木の地域でも行政担当者がしきりに勧めてくる「みずみどり」での集落組織化に関しても、同様の考え方から懐疑的だ。地域や水田の生産環境を守ることに、期間の限定された政策で補助を受けたとしても、その予算が切れたら一体どうするというのか。
補助金をもらわなければ自らの村を守れないというのは情けない。かつては誰もが自賄いでやってきた村を維持する仕事が、いつの間にか補助金頼りになってしまったのだ。「村の高齢者たちが村仕事をお金のためでなく、楽しんでできるような仕組みを作り出す。それも村に生きる農業経営者として、知恵を出していかねばならないことでしょう」と高木は言う。
ところで、高木の住む地域のコメは食味では評価は受けているものの、収量は7?8俵と決して多くない。であればこそ、地域の風土を含めて顧客満足のあるコメ作りをする必要があるというのが高木の考えだ。コメの販売価格は、玄米で個人には1俵2万円相当、米穀店向けにはコシヒカリで1万3200円。播種前におおよその注文をとってから作付けている。こんな資材を使ってほしいという要請には、それにあわせた見積もりもする。
山の機械と同様、水田の機械もほとんどが中古機だ。機械のメンテナンス能力が高いだけでなく、鉄骨倉庫やプレハブ冷蔵庫なども、部材を買ってきて自分で建てた。自ら設計施工するだけに、使い勝手を考えた工夫が設備の随所に見受けられる。フォークリフト用のパレットも、売れない木材を使って自作したものだ。そんな高木のところには、機械商も出物の中古機や新古機の情報を持ってくる。
少ない手間で仕事をこなすため、所有する機械の数は決して少なくない。にもかかわらず、「借金も今年には完済してしまうので、融資の実績を残しておくために今年は何かを買おうと思っている」と笑うほど、高木の償却費は少ない。
すべての水田に電気柵を立てるなど、その手間はほかの地域と比較しても多くなるはずだ。しかし、高木はこう言う。
「人は自分の手間の多さを理由に生産コストがかかるというけど、獣の被害は急に増えたわけではなく、昔からあったわけです。電気柵を張るのが手間だというけど、それをしなければ収穫が皆無になってしまいます。だからここでコメ作りをする限り、どうしても必要な作業なのです。でも、そのために夜も寝ずに仕事をしているわけではありません。労働コストを考えるのは当然ですが、それを見合わないと考えるのは、働かされている者の考え方ではないでしょうか」
高木の地域でも行政担当者がしきりに勧めてくる「みずみどり」での集落組織化に関しても、同様の考え方から懐疑的だ。地域や水田の生産環境を守ることに、期間の限定された政策で補助を受けたとしても、その予算が切れたら一体どうするというのか。
補助金をもらわなければ自らの村を守れないというのは情けない。かつては誰もが自賄いでやってきた村を維持する仕事が、いつの間にか補助金頼りになってしまったのだ。「村の高齢者たちが村仕事をお金のためでなく、楽しんでできるような仕組みを作り出す。それも村に生きる農業経営者として、知恵を出していかねばならないことでしょう」と高木は言う。
メーカーの立場に徹し地域を見つめ続ける
ところで、高木の住む地域のコメは食味では評価は受けているものの、収量は7?8俵と決して多くない。であればこそ、地域の風土を含めて顧客満足のあるコメ作りをする必要があるというのが高木の考えだ。コメの販売価格は、玄米で個人には1俵2万円相当、米穀店向けにはコシヒカリで1万3200円。播種前におおよその注文をとってから作付けている。こんな資材を使ってほしいという要請には、それにあわせた見積もりもする。
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高木正美 タカギマサミ
岐阜県大垣市。1963年岐阜県生まれ。1985年に芦屋大学教育農学部を卒業後、旧上石津町役場の税務課に就職。農家の申告指導などにあたる。1990年、役場を退職して就農。現在は耕作地22haのうち15haで水稲を作付けし、「コシヒカリ」「ひとめぼれ」などを栽培して米穀店などに販売している。また、冬季には山林で材木の切り出し作業も行っている。取引先は米穀店のほか業務筋を中心に一部JA、個人客。
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