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新・農業経営者ルポ

過疎の中山間地に経営の可能性を見つける

 高木のコメ販売の主体は、名古屋、大阪、兵庫などの米穀店6?8軒が主体。地権者をはじめ、その関係者や紹介で広がっていった個人客も約100名いる。高木もかつては宣伝をして積極的に個人客を集めた時代がある。色彩選別機の導入も真剣に考えた。しかし、ほとんど一人で済ます経営であれば、顧客に対するきめ細かな対応はできないと考え、米穀店主体の販売にシフトした。

 「コメは最終商品ではなく中間商品だと思うのです。だから理念を共有できるビジネスパートナーとして選んだ米屋さんと、本気になって組もうと思います。顧客と利益を分け合い、お互いの利益を最大化するにはどうするかを考えたい」という。

 農産物ほど産直によるネット販売が有効な商材はない。農家であれば、その食味や鮮度だけでなく、生産者の人柄や背景の風土を幻想も含めて顧客に提供できるからだ。高木ほど「言葉」を持った経営者であれば、産直農家として顧客にメッセージを伝えることは可能だろう。

 しかし、高木は米穀店と組むことで、生産者としての可能性を広げる道を選んだ。これも、先述した風土を含めた農業ビジネスの構想を考えればこその判断だ。米穀店に呼びかけて、消費者の産地見学を受け入れたりもしている。

 目線の揃った異業種としての米穀店と組むことで、高木は事業開発力を持つメーカーとしての立場に徹しようとしているのである。

 特別のことではないコメ作りを通して、顧客にその背景にある風土まで想像させられるような生産者の存在。さらに、この地につながる人々だけでなく、様々な地域の条件を経営資源として活かそうとする試み。そんなことを通し、高木は地元の高齢者にも、経済的なもの以上に農村人としての誇りや喜びを感じてもらえる道筋を模索しているのだ。(文中敬称略)

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