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農業経営者ルポ

好きで選んだ道だけど、未だ迷いの中にいる

  • 『農業経営者』編集長 農業技術通信社 代表取締役社長 昆吉則
  • 第31回 1998年08月01日

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施肥はかつての10分の1


 菊作りを始めて5、6年目から連作障害に悩まされ始めていた。原因の多くは過剰施肥に由来する障害である。今では養液土耕栽培の第一人者といわれる養田さんであるが、当時は「あれが効く」「これが良い」と言われるままに、様々な資材や肥料を使っていた。施肥過剰が原因であるとも知らず、育ちの悪い場所に追肥をする養田さんだったのだ。過剰による障害が出ている所ほど、ますます施肥過剰になっていった。

 養液土耕を始めるまでの20数年間、普及所の指導あるいは人の話を聞いて過剰施肥を続け、やがてハウス土壌は超肥満体の富栄養状態になっていた。ちなみに養液土耕に変えた時点でのハウス土壌の肥料成分は約120kg/10aで、土の表面が乾くと真白くなる状態だった。当時の1作の施肥量は20kg、現在はその10分の1である。

 当時の養田さんのハウスは、まさに過剰栄養を原因とする糖尿病患者の状態だった。合併症として出る様々な障害に悩んでいるにもかかわらず、その根本原因としての過食を続け、怪しげな薬を飲み続けているようなものだった。合併症に悩み、その対症療法の薬の副作用に苦しみ、さらにその二次的障害のための薬を飲むというのに似た悪循環に陥っていた。

 養田さんが養液土耕に踏切ろうと考えたのは、20年使ったハウスを倍の面積に拡大したことがきっかけだった。長年使った場所と痩せ地の新しい場所の作物の育ちがあまりにも違っていたからである。作業が競合しないようにローテーションを組んで作付けしているはずなのに、土が痩せてるはずの新しいハウスの菊の成長が古いハウスに追い付いてしまうのだ。

 それまで「肥料をやってこそ作物は育つ」「肥料が足りないから菊の育ちが悪いのだ」と考えてきたのに、それでは説明がつかなくなったのだ。

 そして参加した栃木農試花卉部での勉強会だった。平成2、3年のことだ。

 勉強はハウスの土の肥料成分を乾土式と同時に当時普及し始めた土壌溶液で調べてみることから始まった。土壌溶液の分析は、作物に供給されている肥料成分をその場で知ることができる技術だった。本誌でも紹介しているミズトールやイオンメーターを養田さんが手にした最初の体験だった。それを通して、想像していたのとは反対に、土の養分が少ない場所ほど菊の育ちが良く、肥料濃度が高い所ほど育ちが悪いという事実を見せ付けられたのだ。土壌溶液と樹液を同時に計ることで、土壌溶液中にはあるのに、他の成分が過剰であるためにカルシウムやその他の微量要素を作物が吸収できないでいることも確認した。

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