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農業経営者ルポ

好きで選んだ道だけど、未だ迷いの中にいる

  • 『農業経営者』編集長 農業技術通信社 代表取締役社長 昆吉則
  • 第31回 1998年08月01日

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 菊栽培では、あらかじめ菊の芽を箱などに挿し、発根させた後にハウス内に定植するのが普通だそうだ。その場合の10a分の手間は、芽を箱に仮挿しするのに4人で1日、箱から抜くのにまた4人で1日かかる。作業の準備に2、3時間はかかり、育苗中の管理作業もあるので、延べにすると少なくともハウスに定植するまでに4人で2.5日、すなわち10人/日はかかるそうだ。

 これに対して養田さんは、切ったままの発根させてない芽をハウスに直接挿していく直挿しという方法をとっている。挿し芽の坪当たり本数は110本。直接挿し芽する方式の場合、挿し芽の作業も簡単で、通常の定植作業と同程度の時間かかったとしても、作業は1日で終わる。実際には、もしもの事故を考えて2日間に分けて直挿しする。これで養田さんは1作の必要労働力から仮植による発根のための手間10人/日分を省力した勘定になる。年間にすれば直挿しにすることで110人分の労働力を減らせるわけだ。コスト低減はいうまでもない。養田さんは、1200坪のハウスを年間2・75回転させ、年間11回の出荷サイクルで植付けをしている。これによって出荷回数をもう1回増やすことも可能になるかもしれないのだ。

 菊の直挿しをする人は他にもいる。でも、葉面の水分維持のために直挿しした菊の上にベタ掛け資材などを被覆する人が多い。しかし、その方式だと時期によっては地温が上がり過ぎて障害が出ることもあり、さらに被覆資材の展開、撤去の手間が大変だ。

 そこで養田さんは、ハウス内の直挿しをしたブロックをカーテンで囲み、防除と夏期の冷房用に配管した散水ノズルから10分間隔に2分ずつ煙霧散水をして、作物の雰囲気湿度を高くする方法をとっている。それによって土を過湿の状態にすることなく、直挿しした葉に常に細かな水滴を付着させ最適な葉水を与えているのだ。発根には土への灌水よりも葉水の方が効果が高いからだ。

 ベタ掛け資材利用の場合には地温や水分状態によって資材の展開・撤去を行なわねばならず、その手間がかかる。でも、煙霧散水は完全に自動化できるのでまったく手間も必要としない。また、夏には気化熱利用の冷房としても有効だ。

 実はこの方式は、菊作りの仲間が試していたのを真似したものだ。しかし、その人の場合にはノズルの口径のためか、霧の具合が悪くうまくいかなかったと養田さんは気の毒がっていた。

 施設園芸の常識では、ハウス内の湿度が高くすれば病害発生の原因になりかねないといわれるところだが、養田さんは、作物自身には85~90%といった湿度の高い状態の方が良く、土壌や作物の栄養状態や防除技術その他の管理レベル低さが問題なのではないかという。むしろ、点滴灌水の場合だとハウス内は乾燥気味になるが、植物体が体内に栄養分を集積する段階では、植えた場所の空気の湿度は高い方が乾燥しているより微妙にカルシウムの吸収が良いような気もすると養田さんは観察している。

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