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特集

作る人、運ぶ人、売る人、調理する人
「食べる人のために、何を共有すべきか」

「 創業と直売を始めた理由」


金子: ウチの会社は、私たち酪農家達で作った会社なんですよ。創業のキッカケは、北海道で生産された牛乳の乳価が全て同じ価格なのはおかしいじゃないかと思ったわけです。北海道と一口に言っても、道東や道北のような大規模産地もあれば函館のように小規模な産地もあるわけですし、生産と輸送のコストも違うのに何で同じ価格でなければいけないのか…?と。それで昭和48年、たった4人で会社を作って、スタートし今では70人になりました。お蔭様で離農する農家は一軒もなく、他からウチに来た農家も、販売を伸ばさせていただいてます。

 しかし、創業当初は大変な苦労の連続でした。結局、私達に牛乳を出荷するという事は、即ち「ホクレン」さんを離れる事です。地元では大問題になりました。

 今だから笑い話ですが、わざわざホクレンさんからウチに人がやってきて、「どうせ3ヶ月で廃業するのだから今ならプラントごと買い入れるから今すぐ止めなさい」と言い、農家には『融資を打ち切る』とか言う話が来たわけです。また、府県に売りに行った時もそうですね。

 オープン1ヶ月前に販売をOKしてくれていた30軒くらいの店全てが突然「ノー」と言ってきたんです。

 その理由は既存のメーカーからの圧力で、もし、函館牛乳のものを扱うんだったら、『アイスクリーム入れないよ』とか、『看板下ろすよ』とか脅かされたらしいんですよ。突然、売る方法が無くなってしまい考えついた苦肉の策が、結局移動販売だったんです。今同じような直売がありますが、元祖はウチなんです。


品質に対してのこだわり


後藤: 函館牛乳さんのヒットの大きな要因として「品質」という事があったと思いますが…

金子: ウチは生産者に対しては、とても厳しい目でお付合いをさせてもらってますよ。しかし、他のメーカーと根本的に違うところは、『美味しい牛乳は、高く買う』という点です。こうゆう考えでやっている所は他にはないと思います。

 本来、同じ牛乳でもバターの原料と飲用乳に求められる「品質」は別物のはずが、実際は区別はありません。メーカーがバター用に求めるのは、たんぱく質や脂肪の質よりも、バターがたくさん取れる、脂肪分が多い牛乳です。であれば農家の目標もそれだけになってしまいますから、牛の育種や餌のやり方などの全てがそういう方向になり、牛乳の「品質」の事が等閑視されます。日本中の牛乳が全てそうゆう基準だったのでウチでは、飲用の「品質」に取組んできたのです。

 まず初めは、「おいしい牛乳」「お客さんの求める牛乳」って何だろうと色々調べていきました。牛乳のおいしさはには様々な要因がありますが、日本の牛乳は海外の牛乳と比べると「カルシウム」が少ないという特性があることに気付いたのです。その理由は草地に「カルシウム」が不足しているからであり、日本の土壌が火山灰の酸性土壌だからです。しかし消費者は牛乳に対して良質なカルシウムを摂る飲物としての期待を持っている。

 それで、草地の「カルシウム」のことを真剣に考えようということになり、それから毎年、きちんとした量の土壌改良材を撒いてもらうようにしたんです。また、カルシウムの品質にこだわるならば、おいしさに関わる脂肪の比率や質、鮮度などにも独自の規格を作り、殺菌方法は低温殺菌、さらに牧草への農薬散布を止め、乳牛へのホルモン剤や抗生物質などの使用も出来る限り少なくしようと…。

 そして、このような牛乳の品質への取組みを生産者も一緒に考え、取組んだ結果が、最終的に消費者の方々の反応に繋がったのだと思います…。

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