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特集

作る人、運ぶ人、売る人、調理する人
「食べる人のために、何を共有すべきか」

誤魔化しは続かない…


金子: 牛乳というのは非常に正直な商品で一切誤魔化す事が出来ないですね。酪農は事業ですから儲からなくてはならない。でも目先の経済性の事だけを考えていていいのかという疑問があります。

 現実に、売れるからといって、牛乳に色や匂いや、味を付け足して低品質の牛乳を販売しているわけですが、そんな誤魔化しをする商品ではないはずなんです牛乳というのは。

 もっと素朴で正直でなければいけない商品で、それを扱う人間も正直で、良心的でなければ味も微妙に変わってしまうんです。確かに合理化して行けば、飼養管理や、機械化に強い、経営力のある酪農家が勝ち残るでしょう。しかし、大切な事はそれだけではないと思います。

 私は酪農というのは永遠に作り続けるということが原則だと思うんです。だから「土」に対しても「牛」に対しても誤魔化す事が出来ないはずなんです。

 人間がやる部分では誤魔化しが出来ますが、「土」や「牛」などの自然に頼る部分では誤魔化しは出来ないんです。

 かつて、自分が生産者だった時に、自分の農協であるにも関わらず、農協を騙して売る生産者がいました。農協も質が悪いのを知っていて、商人を騙して売ってしまうということがありました。

 それを農協の売り方が良いといって、もてはやされたりしていた時期もあったけど、そんな誤魔化しをして結局はダメになってしまった…。誤魔化しをしないようにしなければ、それを作り続ける事も、売り続ける事も出来なくなるのです。

後藤: それが忘れ去られた結果が現在の農業の衰退の原因という事でしょうか?

金子: 率直な考えとしては、日本の農業は、本当に将来があるのかというような状態だという気がしてます。

 10年、20年のうちに必ず、「あの時の政策は失敗だった、そんな中であなた達が農業を守ってくれて良かった」といわれる時期が来ると思って今まで頑張ってきたけど、本当にそうなるんだろうか? という不安を持たざるを得ない状況ですね。

 農業が大事ということは、国もわかっていると思うんですが、農地だけを守ろうとしてもだめです。そこには農家がいて、生活の場としての農村がある。その辺を理解していないように思うんです。それでは農業は栄えるはずありません。

そんな状況の中で我々はどう戦わなければならないのか…。それは、やはり本当の農業が生み出す、本当の食べ物を、良心的に皆さんに伝えていくという事なんじゃないかと思うんです。この事が真理であれば、農業は続いていくんじゃないかな、と思うんです。 農業の名を借りて、一時しのぎをしている人や企業もあると思いますが、そんな人や企業は長続きしないと思います。

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