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特集

作る人、運ぶ人、売る人、調理する人
「食べる人のために、何を共有すべきか」

昆: 農家あるいは農業関係者の中には「商社」というと「安い海外農産物を輸入して国内農業を崩壊させる存在」といった見方をする人もいます。しかし、消費者の間には強い国産品志向があるにもかかわらず海外からの農産物輸入が増えるのは、そもそもの国内農業が衰退しているからです。むしろ消費者のニーズと対面する小売業や外食業などの調達の要求に答えるためには海外に頼らざるを得ないということでしょうし、基本的には、需要があり供給可能性を持つ生産地があるとすればそこに取引が生まれるのはあたりまえの経済の原則であるともいえます。この間、伊藤忠さんが海外農産物の扱いに加えて、国内農産物の安定的供給にたいして本格的に取り組みはじたと聞いていますが、それが我が国の硬直した農産物流通に一つの展開方向をもたらす改革につながるのではという期待もあります。生産者や産地業者、あるいは消費者と直接顔を合せる小売業や外食業の立場でもない中間業者だからできる、農産物流通を改革するオーガナイザーの役割があるのではないかと。


見る先はスーパーの棚です


松丸: 私達は従来、輸入生産物を取り扱ってきました。そのような中で、国内の生産者の方々とも10年に渡っておつき合いさせて頂いています。そして3年前から実際のビジネスとして始めたわけです。生産者の方々には、例えば、輸入生産物と一緒にどこどこのスーパーにこういう形でやっていますよ、とお話ししながらやっています。

 私達は全て売り場からものを見ます。これは外食産業でもスーパーでも同じです。ですから生産者の方々には、伊藤忠の顔を見てはいけません、中間流通業である伊藤忠がたまたま仲介しているだけで、あなた方の見る先はスーパーの棚であり外食のテーブル、つまり売り場です、とお話ししています。

 売り場で何が起こっているのか。輸入品、国産品、惣菜もあるし、そこで、どういったカテゴリー・マネージメントが行われているのかを見て頂きたいのです。例えば朝食サラダセットのレタス。自分達が作ったレタスが何g入っていて、いくらで売られているのか、あなた方がいくらで出荷したものが、いくらで売られていて何倍になっているのか、といった価格の実態。そして作ったものがどういう流通経路を通って、鮮度が落ち、どのくらいロスが生じているのか、おそらく作ったものの半分も残らないかもしれない。そういった流通過程で起こっていることの実態もぜひ知って頂きたいのです。


流通の合理化が農業再生の鍵


昆: 流通の合理化はいうまでもないのですが、野菜農家の仕事を拝見していると袋詰めや箱詰めといったパッキングの作業に取られている時間がすごく大きく、それが農業生産コストの上昇や労力調達上の問題を起こしているます。農家は袋詰めして「付加価値を上げた」と誤解しているけど、それは流通業者の下請けの賃仕事をしているだけです。農業生産者の本当の仕事は、土の管理を含めて作物生産そのもののレベルをあげ生産を合理化することのはずです。

松丸: その通りですね。一方、中間流通の場合の合理化とはこういうことです。現在、青果の最終小売り末端価格のうち3割が生産者の出荷価格、2割は小売り業者のマージンと言われています。残り5割は実に中間流通で消えていきます。例えば物流費や包装代、これに関わる人件費、ロス費、そして業者のマージン等がその中に含まれる。この部分の合理化が中間流通の大きな課題です。

 伊藤忠は今二つのことを提案しています。一つは、広い意味での売り場対応型食品流通です。そしてもう一つは、総合的な新しい物流です。今は生産者がパッキングをして、農協なり何なりの手を通って、中卸しへ行ってと複雑な経路を経ている。これを専用センターを設けるなどして変えていきたいのです。

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