ナビゲーションを飛ばす



記事閲覧

  • このエントリーをはてなブックマークに追加はてな
  • mixiチェック

農業経営者ルポ

「経営者」を目指すなら原点を持て

  • 『農業経営者』編集長 農業技術通信社 代表取締役社長 昆吉則
  • 第32回 1998年09月01日

  • この記事をPDFで読む
    • 無料会員
    • ゴールド
    • 雑誌購読
    • プラチナ
 そんな出合いを通して様々な体験や知識や情報を与えられることになった。それも、向こうから訪ねてきて勉強させてくれるのである。現在の土場渡しで野菜を買ってくれる販売先も元はといえば生産者と資材業者が組んだ流通グループ「がんこ村」を通じての紹介がきっかけとなったものだった。

 ドラム缶から炭焼も始めた。木酢液も採り方によって成分が違うことも知った。作り方だけでなく使い方も工夫するようになった。自分で炭を焼き、それを堆肥に混ぜて畑にスキ込んだ。それも雑誌に大々的に取上げられたりもした。


野菜出荷は畑渡しが原則


 ところで横森さんは、現在、2社の地方スーパーと1社の卸にレタス、ハクサイ、サニーレタスなどを出荷している。その他、地元の個人需要向けに長イモ、ゴボウ、ニンジン、野沢菜などを販売し漬物業者との契約栽培もある。しかし、出荷は全て土場渡しだ。スーパーへの出荷は夏の間は毎日約250ケース。横森さんの畑の脇にある予冷庫から契約した卸業者が野菜を大型トラックで集荷していく。毎日の値決めは市場価格に合せて卸業者に任せてある。需給調整の役割も果してもらう。価格は特別に高いわけではないが、出荷のコストや物流経費が無くなることでの横森さんの利益は大きい。

 この畑渡しの出荷方法は、横森さんの野菜の品質を聞きつけて取引を求めてきた小売業者と中間流通業者の協力によって実現したものだ。3者が野菜の生産・流通の理念を共有することの中から生まれてきたものである。

 土場で持っていかせることが可能になった経緯は、高級品扱いのある卸業者が野菜を売って欲しいと言ってきたのがきっかけだった。しかし、小さなロットでは物流の手段が無い。当時は農協出荷していたので、長野県経済連の東京事務所を通じて逆指名して貰ったが、農協はそれを嫌い、うまく事が運ばなかった。

 その後、現在の取引先の一つである、高崎市のスーパー・サンヨネが着払いの宅急便で送ってくれと依頼してきた。しかし、それでは相手にあまりにも大きな物流コストを掛けさせることになる。そこで、同社の野菜を扱う卸業者が中に入り、物流を担当することになって今の形が定着した。

 横森さんの野菜だけでは大型トラックは満載にできない。そのため、牛乳、エノキタケ、ホンシメジ、米など横森さんが責任を持って推薦できる地域の良品生産者を紹介して、物流経費負担を減らすとともに本物の農産物を調達するバイヤーの役割も果したのだ。価格は農協の平均単価にすることにした。それでも横森さんにとっては物流経費がそっくり利益になる。

関連記事

powered by weblio