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農業経営者ルポ

「経営者」を目指すなら原点を持て

  • 『農業経営者』編集長 農業技術通信社 代表取締役社長 昆吉則
  • 第32回 1998年09月01日

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 「農家の利益が取引相手やお客さんの迷惑になったのでは続かない。その恩を返すにはお客さんを呼べる差別化商品を作ること以外に無い。良いものをつくることが百姓の本来の仕事だし、良いものを作ることは当たり前。でも売れてこそ飯がくえるのだ。売ることは作る以上に難しい。だから自分の出来ることは全面的に努力するし、相手に可能なことは全面的に協力して貰う。相手を活かしてこその自分なのだ。そんな五分五分の関係になることが大事」と横森さんは言う。

 横森さんも自分なりに消費者動向や流通の勉強もする。

 自分の野菜を評価してくれる人であればこそ、特急品や一級品ばかりできるわけではないということを説明するようにしている。自然相手の仕事だからいろんな条件が出てくる。それを我々にかわってお客様に伝えて欲しいから。

 バイヤーだけでなく店先に立つ販売員の人に圃場に来てもらい横森さんを交えてお客様に何を伝えるべきかを話し合う「販売会議」を開くこともある。スーパーのお客様をバスに乗せて横森さんの畑に案内して貰うことも。そのことがお店の宣伝になり、お客さんの理解と信頼を得ることにもつながるからだ。でも、基本はお客さんに納得を得られる良い野菜、安全な野菜を値頃感のある値段で提供して行くことだと横森さんは言う。

 農家が農業の本質に戻って無駄を省けばもっと安くて良い野菜を供給できる。それが農家としての企業努力なのであり、それをやることで農家はもっと儲かるのだ。横森さんの生産と出荷の形態であれば、農協平均単価でも30%位は利益が出てしまうという。

 その中の、5%なり10%を畑に戻し、また、その一部を後継者や新規就農者の教育や支援に当てるべきだと横森さんは考えている。後に続く人を育てるのも、土を作るのもお客さんや取引先への恩返しなのだ。


農業は儲かる仕事なのだ


 横森さんの家には海外からの研修生を含め新規就農を目指す多くの若者が門を叩いてくる。横森さんの指導は、何よりも農業経営者として生きる原点を体験させることだ。

 「経営者教育として必要なのは勉強や研修ではなく『修業』。辛い体験をすることによって経営者になっていく。それは体で憶えるのが早い。百姓と言う商売はそういう商売なのだ。農業はお金を払わなくても、土やお天道様に作物を育てて貰える仕事。だとしたら、無駄なコストを掛けず人が汗をかくことを厭わなければ農業は必ず儲かる仕組みになっている」

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