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質問 岩手県は集落営農でも国の方針に忠実ですね。
土門 それが地殻変動を起こす要因のひとつになっているよ。
質問 えっ、本当ですか。この1月に退職した東北農政局長は「集落営農に参加すれば幸福になれる」とNHKの番組で放言していましたね。
土門 そんなこともあったな。この農政局はトンチンカンな発言であれこれ物議をかもすところだ。その集落営農組織は、その局長さんが放言したように幸福どころか不幸になってしまった。最初の決算を公表したが、どこも大赤字の結果が出たのだ。これまた零細規模農家のフリー作付けに走らせる原因になっている。
質問 東北農政局は、3月21日、岩手に足を運び、集荷業者を絨毯爆撃して減反協力を呼びかけています。
土門 いかに東北の田植が遅いといっても種まき直前だ。そんな頃に減反協力を呼びかけて農家が「ハイ、分かりました」と答えてくれると思っているだろうのか。しかも集荷業者を戸別訪問して「一人も漏らさず生産調整に協力するよう指導してくれ」と懇願していたそうだが、損することが分かっていることを、集荷業者がどうして客の生産者に「指導」できるのか。これは農水省自ら「打つ手なし」と宣言しているようなものだよ。世間の常識が分かっていない「お気楽なお役人」としか喩えようがない。それに本省からの訓示を受けてのことかどうかは分からないが、「国は非協力者へのペナルティーも考えている」という脅しのセリフを口にしつつ、「やはり難しいでしょう」と支離滅裂だ。最後には「農協さんでも、協力者のコメに色をつけて買うわけにはいかんだろうな」とお手上げ発言もあったそうだ。
質問 色をつけるとは。
土門 減反協力者のコメを高く買ってやれという意味らしいな。このお気楽なお役人さんにぜひ聞いてもらいたいのは、行政や系統の方針に忠実に従ってきた零細規模農家の間で、政府の言う通りにやったら、損ばかりさせられたという切実な声が沸き起こっていることだ。最近は集落の座談会に家庭の主婦が参加してくるケースも目立つという。亭主を出せば、行政や農協にいい顔をしてくるからだ。家庭の主婦なら損得で判断してくるということか。それだけ地方の経済事情が深刻な証だ。
質問 家庭の台所事情で判断されるようになってきたのですね。
土門 そうだよ。そんな農家にこれ以上、減反や集落営農を強要すれば、家庭の主婦たちが次に下す決断は、農協共済の解約。その次には農協脱退というコースだ。
土門 それが地殻変動を起こす要因のひとつになっているよ。
質問 えっ、本当ですか。この1月に退職した東北農政局長は「集落営農に参加すれば幸福になれる」とNHKの番組で放言していましたね。
土門 そんなこともあったな。この農政局はトンチンカンな発言であれこれ物議をかもすところだ。その集落営農組織は、その局長さんが放言したように幸福どころか不幸になってしまった。最初の決算を公表したが、どこも大赤字の結果が出たのだ。これまた零細規模農家のフリー作付けに走らせる原因になっている。
質問 東北農政局は、3月21日、岩手に足を運び、集荷業者を絨毯爆撃して減反協力を呼びかけています。
土門 いかに東北の田植が遅いといっても種まき直前だ。そんな頃に減反協力を呼びかけて農家が「ハイ、分かりました」と答えてくれると思っているだろうのか。しかも集荷業者を戸別訪問して「一人も漏らさず生産調整に協力するよう指導してくれ」と懇願していたそうだが、損することが分かっていることを、集荷業者がどうして客の生産者に「指導」できるのか。これは農水省自ら「打つ手なし」と宣言しているようなものだよ。世間の常識が分かっていない「お気楽なお役人」としか喩えようがない。それに本省からの訓示を受けてのことかどうかは分からないが、「国は非協力者へのペナルティーも考えている」という脅しのセリフを口にしつつ、「やはり難しいでしょう」と支離滅裂だ。最後には「農協さんでも、協力者のコメに色をつけて買うわけにはいかんだろうな」とお手上げ発言もあったそうだ。
質問 色をつけるとは。
土門 減反協力者のコメを高く買ってやれという意味らしいな。このお気楽なお役人さんにぜひ聞いてもらいたいのは、行政や系統の方針に忠実に従ってきた零細規模農家の間で、政府の言う通りにやったら、損ばかりさせられたという切実な声が沸き起こっていることだ。最近は集落の座談会に家庭の主婦が参加してくるケースも目立つという。亭主を出せば、行政や農協にいい顔をしてくるからだ。家庭の主婦なら損得で判断してくるということか。それだけ地方の経済事情が深刻な証だ。
台所事情から共済解約、農協脱退のコース
質問 家庭の台所事情で判断されるようになってきたのですね。
土門 そうだよ。そんな農家にこれ以上、減反や集落営農を強要すれば、家庭の主婦たちが次に下す決断は、農協共済の解約。その次には農協脱退というコースだ。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
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