「経営の危機管理と後継者への経営移譲のためのJGAP」
岡本梨園 岡本泰明

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日本GAP協会 公式解説書(シリーズ2)

JGAP導入事例 家族経営のナシ農家によるJGAP導入(その1)

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「経営の危機管理と後継者への経営移譲のためのJGAP」
岡本梨園 岡本泰明


JGAP導入の動機

栃木県でGAPという言葉が最初に聞こえてきたのは、食品衛生法の改正でポジティブリスト制が始まったときだと思います。農薬のドリフト等が問題視されたときに、各種対策が出て、GAPの有効性が話題になりました。具体的な内容は、生産工程管理が主な内容だったように思いますが、単なるチェックリストであったことに違和感を覚えました。そもそも生産工程管理という言葉自体も農家になじみの少ない言葉でした。JAS有機の企画にもそんな言葉が載っていたような気がします。懇意にしている県の普及指導員との雑談の中でも、「なにそれ?」といった感じで、内容はさっぱりわかりませんでした。欧州のEUREPGAP(現:GLOBALGAP)の記事が新聞に載るときもありましたが、そこまではという思いがありました。

改正農薬取締法のきっかけとなった無登録農薬使用問題のときは、農協共選の選果場出荷のナシが回収・焼却処分という苦い経験をしました。何らかの危機管理対策の必要性を感じていたものの、農薬・肥料等資材関係はわかりましたが、どの程度、どの範囲を網羅すればよいかもわからず、栽培履歴程度でよいのか、個々ばらばらな対策で大雑把な記録を残す程度で、時だけが過ぎて行きました。

その後に起きた本県での「イチゴの残留農薬問題」から、県は「イチゴからGAPを始め、次年度は前科者のナシでも行なう」という情報が流れてきました。しかし、具体的な県のGAPの内容は「こんな雑多なものなの?」という感想でした。GAPは「点検だ」、「点検の回数が重要だ」と説明され、何か釈然としないものがありました。県の普及指導員との会話でも「どうなんでしょうね?」、「どこかで、JGAPのチェックリストを手に入れてよ」。この言葉があとになって大変な思いをするきっかけになるとは思ってもみませんでした。

なるほど一番基準が高く、項目も多いJGAPを検証すれば、管理の範囲等、詳しい内容も具体的にわかるのではないか。早速インターネットで検索してみると、偶然にも取引先の(株)みのりにJGAPの指導員資格を持っている人がいることを知り、知り合いの社員に連絡しました。驚いたことにその本人も上肢の命令でJGAP指導員基礎研修を受けている最中とのことでした。すぐにもお願いして、JGAPのチェックリスト・指導員講習会の資料を見せてもらい、早速自己採点すると、80%ぐらいはOKで、「思っていたより容易だね」と自画自賛したのを覚えています。

JGAPは総合的だし、適合基準も詳細に記載されているので、わかりやすい。一部国内法にない部分や意味不明なところがあるというのが最初の印象でした。(株)みのりの藤田氏より、「JGAPの認証に取り組みませんか?無料で指導するから」との甘い誘いがあり、知り合いの普及指導員も「個人的に協力するから(私の勉強になるのでお願い)」とそそのかされて、安易に乗ったのが苦労の始まりでした。情報を集めてみると、農家でもJGAP指導員の資格を持つ人や、近くの農業生産法人がJGAP認証を取得済みであるとか、県内のJAハウストマト部会がJGAP導入を計画しているとか、県版イチゴGAP等の情報も聞くことができました。

実際にJGAP指導員の三菱商事アグリサービス(株)の小田原氏と(株)みのりの藤田氏を交えて話を進めると「経費が30〜40万くらいかかりそう」、「家族経営の当園ぐらいの経営規模だと経済的なメリットは少ないかもしれない」という話でした。またGAPの考え方事態が、今までの農家の考え方・評価の仕方・方法が違う点を指摘され、チェックリストの内容以前に駄目出しの連続でした。「チェックリストも、もっと厳格に解釈しないといけないよ」といった感じで、GAP導入以前の意識改革まで指摘され、これが最初の難題でした。

まず第1番目にGAPの導入目的の整理をしました。目的を明確にしないと途中で投げ出すことになりかねません。今までやってきたエコファーマーや特別栽培農産物の生産等と整合性が取れるか、後継者の問題を含めて問題を見直し、計画を立てることにしました。

(1)農産物および経営の危機管理
(2)帳票の整備による後継者への経営移譲の簡素化
(3)JGAPを活用した経営の選択肢の多様化

以上3点を目標にして、認証に向けて、作業を進めていくことにしました。

審査・認証についての紆余曲折・苦労話は、後半に譲るとして、まだJGAPを1年ぐらいしか経験していませんが、「今までにJGAP導入の成果はあったのか?」の問いには、あったと答えます。(続く)

この続きは本書でお楽しみください。

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