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栄養週期理論を検証する

栄養週期理論における「土作り」

「土を作れば、作物は育つ」とよく言われる。そのために土作りをするのだと。実際、私もそういった言葉を気軽に使うこともあるのだが、どのような土を作ればよく育つのだろうか。
 一般的には地力のある肥沃な土壌をイメージする方が多いのではないだろうか。科学的な分析では、地力は、CEC(塩基置換容量)、リン酸吸収係数など保肥力を表す化学的な数値や、作土層の厚さ、酸化還元性など数多くの数値で表されている。そのうちの一つで地力という言葉に最もなじみそうな判定基準に「自然肥沃度」がある。

 「自然肥沃度」は、「土壌の本質的な性質による化学的な面の生産力をさす」と定義され、土壌の保肥力、固定力、塩基状態をもとに総合判定している。しかし、その定義を述べた後でこのような注釈が書き加えてある。「自然肥沃度の高い土壌が、必ずしも高い土壌生産力を示すとは限らない。高い生産力は自然肥沃度の基礎の上に、作物の栄養生理に適合した養水分管理がなされて、初めて生み出される」

 つまり、化学的な数字が高くても、作物生理に合わせた管理をしなければ収量は上がらないと言っているわけだ。

 そんなことは当たり前なのだが、土作りと称して過大な有機物を投入したりして、肥沃すぎる土壌を作り続けていることが多い現在の状態を見れば、「地力=肥沃」という常識がまかり通っているように思えるのだ。

 土、光、空気、水といった自然環境の中で農業を営んでいる我々は、その自然環境の中でコントロールできる所だけを人為的に操作し、収量や品質に影響を与えることができる。その中でも土に関しては、最近の有機農産物ブームを反映して、様々な土作り論が展開されている。

 栄養週期理論を検証する連載で唐突に土の話から始めてしまったが、適切な時期に、適切な施肥を行なうというだけが栄養週期理論ではない。ともすると施肥理論だけのように誤解されてしまう栄養週期理論であるが、土の部分が無視されているわけではないのだ。当然土に対する言及もある。冒頭に述べた土の話も合わせて、今回は土にスポットを当てて、土の意味、土作りの意味を再定義してみたいと思う。

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